#03  霧島酒造のさつまいも発電

 みなさんは芋焼酎で有名な霧島酒造さんが取り組む、焼酎を作る時に出る搾りかす蒸留残渣を使った「さつまいも発電」をご存知でしょうか。

今回我々は霧島酒造本社で経営企画室の黒木室長とグリーンエネルギー部の田原副部長にお会いして、さつまいも発電とはどんなの物なのか、発電する時にはさつまいいもの香りはするのか?そんな事を考えながら車を宮崎県都城市に走らせました。

経営計画室・黒木尚之室長(以下、黒木) 弊社が「さつまいも発電」をはじめたのは、もともと、焼酎をつくりますと、当然「焼酎カス」が出てきます。その焼酎カスを処理できないと、焼酎0がつくれない。そういう一つの宿命のようなものがございます。ですから、その「焼酎カスを処理する」ということを最大の目的として取り組んできたというのが基本にあります。焼酎カスを利用して工場内での熱源に使ったり、飼料の乾燥の熱源に使ったりということをやってきました。そして最終的には、製造工場は24時間フル稼動しているわけではありません。そのため夜間は工場においても利用できない実状があり、そこで「資源を有効利用しよう」ということで、グリーンエネルギー部の田原副部長の方で、「さつまいも発電」としてその利用に取り組んだという、そういった流れなのでした。

—一般的に電力を販売しようとは、まだ考えてない?

グリーンエネルギー部・田原秀隆副部長(以下、田原) 弊社の場合は「FIT」、つまり「固定価格買取り制度」で九電さんに売電しています。必ずしもすべての電力を場内で使うわけではなく、九州電力さんに売っているんです。

―工場内の電気を自給しているわけでもない?

田原 先ほど黒木からお話もありましたが、発酵というのは、なかなか瞬時にコントロールできるようなものでもないわけですから、24時間メタン発酵しまして、バイオガスはコンスタントに出てきます。  
しかし弊社の場合は、発電がメインではなく、メインは当然焼酎の製造にあります。その工程の中で、蒸気ボイラーの燃料として供給しているんです。それで時間帯によって余ったバイオガスを、発電機の燃料にしようということでやっています。でもそれも、工場が動かなくなってから発電してますので、場内でも電気はそんなに消費しない時間帯なんですね。ですから、九州電力さんの方に売電しているというかたちです。

―蒸気ボイラーの仕組みというのは、古くからあるんですか?

田原 これは2012年からです。

―販売は、FITが始まったから開始した?

田原 以前から発電に関しては色々調査してきましたが、今は発電機は非常に高いです。その時に、環境というのは持続性がないと、つまり経済的にも成り立たないと、持続していきません。ですから、「自家消費」ということで考えると、ずっと「赤字垂れ流し」という状態になってしまう。ですので、これで黒字になるわけでもありませんが、持続するような収支バランスをみた時に、これは「どうしても売電した方がいいな」となりました。  
環境というものは理想論になりがちだと思うんですが、とはいえ、経済的に成り立たなかったらその場だけですから。だから、そういうFITが出てきて、「それなら赤字にはならないな」ということでスタートしたんです。   
焼酎の場合、生産工程でカスは必ず出てきます。それを目の前から処理していかないと、生産自体ができません。そして我々の事業というのは、地域の芋、米、水といった、言わば地域の自然に支えられて成り立っています。ですから、ただ「処理」と言っても、周辺に環境負荷を与えるようなやり方では、そもそも弊社の事業そのものを否定するようなことになってしまう。  
弊社はお酒をつくってますが、言ってみれば「農産加工」やってるわけです。そしてこれは農業の全国的な課題ですが、後継者問題とか、それこそ「持続可能なのか?」という大きな命題があるわけです。だから、「廃棄物」といってももともとは農産物であり、ここでうまく環境負荷もコストもかけないことが、そのまま農産物の価値を高めることになっていく。そこで、うまく経営体質を強くできれば農産物も高い金額で買えるようになっていくでしょうし、そうなれば農家さんも喜んでくださると。  
「さつまいも発電」はそういう位置づけでの取り組みで、そのかたちでここまで一番いいのが「メタン発酵」でした。それは、電気の方で脚光を浴びましたが、一番は熱利用の方が変換効率はいいんですね。ですからそこは、発電機を入れた後も熱利用優先を崩していません。  
採算だけみたら、すべて発電した方が利益が出るんです。ただそれは、私どものもともとの主旨ではない。あくまでも生産工程のボイラー燃料として使えるだけ使って、それでも余ってるのを発電するわけです。これは、発電機を入れる前は、ただ燃やして捨ててたんですね。

—産廃みたいな扱いですか?

田原 いや、ただとにかく燃やすと。ですから、その分を発電にまわしたということです。

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