#38  ペットショップ シュシュ 澤木さん

年間10万頭(※平成26年度環境省発表)僕たちが、毎日食べる豚さんや牛さんの数ではなく、保健所に持ちこまれ殺処分されているペット達(犬と猫だけです)の数です。ちなみに日本の自殺者の数は3万人/年間。
 しかもこの数には、ペットショップなどの業者で売れ残った犬や猫の数は含まれておらずそれらの犬・猫はどこにいっちゃうんでしょうね?
 この物言わぬ小さな仲間との関係を再構築するために立ち上がったのは、小さな田舎のペットショップでした。
 岡山の小さなペットショップ「シュシュ」が始めた勇気あるアクションから僕たちも希望と勇気をいただきましょう!

正しい道のはじまり

―元々は、普通のペットショップだったんですよね。

ペットショップ シュシュ 澤木さん(以下澤木さん):2015年1月までは販売をやっていました。結局10年くらいはテナントにお任せしてたんですよ。ここにペットショップが入って生体販売をしていました。 それで2015年の3月から今の形になりました。

―かなり思い切った挑戦のように思いますが、スタートのきっかけは?

澤木:愛護団体の方と知り合い、話を聞き調べていくとペットが商品として消費される一方で、売れ残りとして殺される子達が本当にたくさんいることを知りました。今よりも当時は本当に多かったんです。そんなことを考えていくと、新しい家族を迎えたい人がいて、お店も(保健所でも)新しく飼ってくれる人を必要としているのだったら、それを結びつけるのが正しい道として、示す事が出来るんじゃないかと。それが一番の動機です。

―普通に商売として考えると利益を捨て、更に売り物にならないペットのケアもすると見返りのない無駄な投資のように思いますが、経営者としては思い切った決断ですね。

澤木:だから、限られた頭数にしたのも、その一つですよね。

―自分たちのできる範囲でということですか?。

澤木:社会の風向きを考えても生体販売に対する法律的な規制がどんどん強くなってきてまして、例えば店頭に並べて良い年齢も少しづつ上がり始めてます。

―あまり小さいとダメなんですか?

澤木:はい、ダメです。まだ最終的に決定の過渡期ですけども、以前の基準が生後42日だったかな、それを生後56日にいずれしようと。法律的には決まったんですけど今は、49日になってるんですよ。そんな流れにあります。

最後まで世話をするであろう審査

-譲渡する仕組みってどんなサイクルなんでしょうか?

澤木:まず、面談をさせてもらっています。

―欲しかったらあげるみたいな軽い感じじゃないんですね。

澤木:基本的にはスタッフに任せていますが、面談はメチャクチャ厳しいです(笑。

―譲渡の基準がですか?

澤木:私もドン引きするぐらい厳しいです(笑。

―最後まで世話をするであろう審査をしてるわけですね。

澤木:やっぱり引き取ってきた時からスタッフが世話をしているので、各々の愛情もあります。ハードルを無理にあげてるわけじゃなくて、しっかりと任せられるご縁があれば、ここに来て2週間で決まる子もいます。ご縁がなくて一番長い子だと半年くらいはここにいましたね。

―僕が知ったぐらいですから全国的に情報は拡散されていると思いますが、遠方から来られる人も多いですか?

澤木:来られますが、まずは条件面を聞き取りなどでクリアした後にトライアルとして1週間お試しで飼ってもらう期間があります、その時、この子達を車で届けるので、今は岡山県内に限っているんですよね。一回だけ香川県に行ったことはあるのですが、その経験を踏まえて岡山県内だけにしようと思いました。犬と車の相性もあるんですよ。車の移動で吐く子もいましたから。体の負担も大きいですし。何かあった時に我々が引き取りに行く場合も想定しているので。

―売ってる以上の責任があるのですね。

澤木:多分、生体販売で10万円から20万円くらいじゃないですか、その金額を出せばペットショップはホイホイ売ってくれますから、その方が簡単なのは簡単です(笑。

―お金の割り切りだけですかね。

澤木:この子達は保健所にいた子なんで、何かしら一度は不幸な状況になっているので、二回目は絶対ないようにということですよね。我々も一昨年まで生体販売もしていましたが、その頃に比べて基準は高いです。普通、犬が欲しいとペットショップ行って買うのがスタンダードじゃないですか。あえて、ここに来て保護犬を選んでくれる人たちなので、そこに対する思いが強い方が多いです。

犬が人生二回目の不幸にならないために

―飼い主さんは犬の物語を受け入れるそんな覚悟がいるんですね。

澤木:今までの里親さんたちは犬を飼った経験があるか、今現在飼っているご家庭に行ったケースがほとんどなんですよ。

―そうじゃないとダメなのでしょうか。

澤木:えーと、難しいかなと思っている所もあります。

―それは普通のペットショップ買うよりも犬の扱いが難しいからですか?

澤木:結構大人の子が多いですし、しっかりと個性がみんなついてるんですよね。9歳の犬もいるんですが、それぞれ犬の人生を歩んでいるので個性的なんですよ。子犬を買ってきて家族の色に育て上げるのとは違う接し方になるんですよね。

―留学生を一人受け入れたみたいな感じですかね(笑。

澤木:そうですね。なので過去に飼育経験がない方には思っても無い事が起こったりして、実際無理って言われたケースが1件だけあります。だからはじめて飼うひとには、我々もより慎重になっています。「こんなに吠えるとは思わなかった」と言われたケースもありました(笑。

―それは性格ですものね。

澤木:全く吠えない個性の子もいますし、異常に吠える個性の子もいるので。
その辺りを受け入れてくれる度量のある飼い主さんじゃないと難しいですね。

―トイレのしつけはここでやられてますか?

澤木:はい、できる範囲でやっています。我々も受け入れて貰えやすい状態にまで育てないと1週間のトライアルで戻ってきちゃうので。

ドイツにはペットショップがない理由

―ペットショップで売れ残った犬はそこから保健所に行くのですか?

澤木:そうですね。昔はそんな持ち込みを保健所が引き取らないといけない時期があったんですよ。それが3年前の法改正で保健所はプロの業者からの持ち込みは全て断れるようになったんです。だから今はなくなりました。

―どこに行っちゃうんですか?

澤木:河原に捨てたりですね。たまにニュースになったりしますよね。

同じ犬種ばっかり河原に20頭とかね。引き取り屋という裏のビジネスもありますが、最近はマスコミに出て相当叩かれていますから無くなると思います。

―その引き取り屋は引き取ってどうするんですか?

澤木:いわゆる飼い殺しですよね。餌も与えず水もあるのかないのか、排泄もそのままですしね。死にかけてもほったらかしですよ。そんな歪んだビジネスが出てきていて、ペットショップの売れ残りを有料で引取るんですよね。

―倫理観の高いペットショップは少ないんですかね?絶対売れ残り犬は出ますよね。

澤木:テナントで入っていた業者さんは最後の最後まで残った子は、店の裏でウロウロしてたりして店で飼っていました。他は知り合いにあげていましたね。そこは比較的まともなペットショップでしたから。 ―やっぱり命を扱う意識が薄れいているんですかね。

澤木:やっぱり人材育成の面で見てもブラックな会社が多いです。表に見せない面と表に出てくる面が。僕が10年前にお店を立ち上げて初めてペット業界に入って、あまりの落差にひどい業界だなと思いました。
―問題は金で解決する感じですよね。

澤木:最後は行政とボランティアに押し付けてる珍しい業界なんですよ。税金と善意に押し付けてるんですよ。

―東京電力みたいですね(笑

澤木:まだまだ悪い慣習が残っている業界だなと思います。

面白いのはアメリカで全米に100店舗以上あったペットショップが全店舗で生体の販売をやめたんですよね。すると生体販売をやってた頃よりか業績が伸びたんですよ。

生体販売を辞めたら売り上げアップした理由

―100店舗で販売をやめたのは、それもすごい経営判断ですね。

澤木:それ以来、アメリカではその路線がスタンダードになって、生体を売ってるところは少ないと思います。

―ペット業界として日本は遅れているんですね?

澤木:犬を飼おうと思ったらペットショップ以外の選択肢が少ないですからね。

―周囲の反応はどうですか?

澤木:応援の声は、以前と比べものにならない程、大きなものがあります。やっぱり社会的な背景もあると思うんですけど、バブルの時代だったら見向きもしないと思うんです、そんな時代じゃなくなって、日本人も考えるようになった。 拝金主義じゃないこともしっかり考えて賛同する人は多くなりましたよ。売り上げ収益は、この活動を続けてから過去最高になりました。

―岡山以外の人で応援したいと思ったらできることありますか?

澤木:通販していますので、それで買い物してくれるのが一番の我々への応援ですね。新しいペットショップのモデルを経営者の方にも示して理解してもらいたいです。

―それで経営が成り立ってるわけですからね。

澤木:その意味もあって寄付をいっさい受け付けてないんですよ。

―商売として成立するサイクルを澤木さんは表現していると。

澤木:寄付に頼ってそれがなくなったらどうするんだという話ですしね。

エネルギーの先進国のドイツにはペットショップがない。澤木さんのお話からペット業界とそれを取り巻く環境について考え想像してみた。こども達も犬も猫も動物もハッピーになる権利が当たり前にあって、それには自立した意識と考え方を持った「大人」の役割が大事だなと感じた。

今回お話しを聞かせていただいた「シュシュ(岡山)」のグループ店が、「アニマルライフ(千葉)」として関東にも登場するそうです。
もちろんこの店舗も生体販売ではなく、保健所から引き取ってきた犬や猫を譲渡という形で展開するそうです。僕たちハッピーエナジーも、物言わぬ小さな仲間をサポートするアクションに取り組んで行こうと思います。

Do it with others 最初は、みんな小さな一歩!出来ることから少しづつ。

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