#54  循環型経済のパイオニア K2インターナショナルグループ

貴方の周りに必ず居る若者たち。
理解しづらい行動、自己表現がニガテで誤解され、キズつき、引きこもるか、
病気に逃げ込むしかない彼ら。
生きづらさの中、もがき、苦しみ、あげくは自分の周囲をも傷つけてしまう・・・
そんな若者に対し、既存の教育や福祉サービスと共に連携しながら
民間ならではの力で支援している団体。それがK2インターナショナルグループです。

始まりは30年前 企業の教育事業部として発足

―若者の支援を始めるきっかけは約30年前に遡るそうですね?

坂本さん(以下、坂本):始まりはヨットの会社の教育事業部門として発足しました。社会的に不登校と呼ばれる子どもたちが出始めている時期で、そんな子どもたちを元気にさせようというプロジェクトでした。

―対象は当時と今と変わってきていますか?

坂本:当時は中学生・高校生が中心でした。今は現状としてはもう少し上の20代30代が多くなっています。当時、支援に繋がらなかった人が10年20年たって、今20代30代になっている現状があります。何年もひきこもっていて、社会との接点が全くなくて、親と会話をする程度という方たちです。

―学生を卒業した世代の方が必要ということですか?

坂本:学校にスクールカウンセラーが配置されるようになり、行政支援が今の現役世代には手が届くようになってきています。しかし、行政の支援では解決しきれない課題も多くあります。高校を中退してしまった人や、高校に行かなかった人には支援が行き届きにくい現状です。

―具体的にはどういったことから始まるんですか?

坂本:K2が柱としているのは共同生活です。スタッフやメンバーと共に暮らすっていうことをしています。長い間ひきこもり状態で、家族としか話してなかったという方が多く、この根岸周辺に10ヶ所以上の共同生活寮があって、全国の家庭から相談があります。

多種多様なプログラム

―やっぱり人と共に暮らす共同生活って大事ですか?

坂本:共同生活をすることで、自然と武装が解除されていきます。日々の生活をしているなかで、いつまでも自分を隠して武装をしていることはできません。隠れているもの、見逃しているもの、本人ですら気づいていないことに踏み込んでいることができるのが共同生活です。
スタッフやスタッフの家族と一緒に生活をする家庭的な共同生活寮をはじめ、アパート形式の共同生活、メンバー同士が共同生活をするタイプ、一人暮らしの準備のための寮などがあります。また、この周辺でアパートを自分で借りて生活をしている人もおり、生活圏を共にしています。

―プログラムはどんなものがあるんですか?

坂本:様々なプログラムがありますが、就農体験を主体にしたものや、被災地での合宿型プログラム、働くきっかけや仲間づくりを目的にしたものなどあります。
設立当初は、1~2ヶ月のヨット航海のプログラムを中心として、日本一周や、南太平洋、カナダなどでヨット航海を子どもたちと一緒にしていました。
しかし、それだけでは1~2ヶ月のヨット生活が終わって家に帰ると、また元の状態に戻るケースも多々ありました。そこで始めたのが、共同生活のプログラムです。

―今も海外に留学するプログラムもあるんですよね?

坂本:そうですね。海外へ行くことで、大きな場面転換ができます。日本の環境を離れて、新しい場所で、新しい生活を始めるためのサポートをしています。共同生活や、就労体験、就学することも可能で、現地の語学学校、専門学校、大学に通う者もいます。

就労への問題

―仕事に就くという出口のあるプログラムというのも大きな特徴ですよね?

坂本:一人の若者を「労働力」としてではなく、「人」として雇い、育ててくれる企業と連携をして、働き続けることができるサポートをしています。働くことではなく、「働き続けること」が大切です。そのために、企業側とは連絡を取り合い、連携をしながら関わりをもっています。

経済性があるからこその継続的支援

―K2インターナショナルグループが凄いのは、まさにそこですよね?助成金を貰って国の下請け的な活動をするのではなく、ニーズにあった支援を独自に展開している。

坂本:これも始まりは30年近く前です。ヨットでの共同生活プログラムをやっていた代表がお好み焼き屋を始めました。 団体が経済的に自立するために始めたお好み焼き屋が、同時に関わっているメンバーたちの研修の場にもなっていきました。

―緻密な戦略があってというより、現場で起こることに対応していった結果そうなったとい感じですか?

坂本:初めから、こういう形を作ろうとしたのではなく、出会った人のニーズに合わせて、今のK2があります。
現在、この地域にお好み焼き屋は3店舗あります。それぞれが連携をしながらも、経済的には自立して運営をして、元々メンバーだった人たちが店長になっています。そして現在も各店舗は研修場所として、メンバーを受け入れて一緒に働いています。

―他に飲食店では「にこまる食堂」も展開中ですよね?

坂本:はい。250円であたたかくて、おいしい食事を提供する食堂です。半年1,000円の寄付金で会員になって頂くと、色々なメニューが250円で食事できます。非会員の方には、350円で食事を提供しています。寄付金や差額分は、メンバーの親御さんが運営をする財団法人に寄付される仕組みとなっています。

―地域も巻き込んでますね?

坂本:最大のポイントは若者支援に興味がない人でも知らぬ間に寄付している、若者支援に参加していることです。250円なら安いから!と、全然若者支援に関心のない方でも食べに来てくれるんです。

―最近スタートした、新規事業はパン屋さんですか?

坂本:そうですね(笑)「コッペパンハウス パン屋のオヤジ」が、2016年4月にオープンしました。お陰様で、多くのお客さまにご利用頂いています。
しかし、店舗販売では限界があるので、次の展開としては外販に力を入れようと考えています。メンバーがスタッフと一緒に地域の企業に出向いてパン販売するために、パン販売をさせてくれる企業開拓もしています。

―益々の広がりが期待できますね。坂本さん、有難うございました。

お話を伺っていて「もう町だな」と思いました。お好み焼き屋や食堂、カフェやパン屋、子育てスポットからクリーニング屋まで、横浜の根岸の町一帯に様々なスポットが展開しているんです。社会性のある活動を単一の事業で運営しているケースはあると思いますが、ここまで発展して一つの町に発展している地域は聞いたことがありません。
経済的には各々自立した体制をキープしながら、その上でお互いにしっかりと繋がっている。そんな‟地域に根ざした循環型”を作り上げたことが、若者たちの自立就労支援を続けるK2インターナショナルグループの最大の強みなのでしょう。

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