#58  算数空手の術

「文武両道」いつの時代からある言葉なのかわかりませんが、少し生真面目で優等生なイメージがあり縁遠い言葉としてどこかに封印していました。

ところが!最近の楽しそうに働くビジネスマンとお話しするとトライアスロンやトレイルランニング、自転車など仕事と生活と運動をバランスよく取り込んでいる方々ばかり!
私自身も朝稽古してから仕事をしたほうが、確かに「頭の切れがものすごくいい」なんてことを体感していたり。

そんな折「空手の先生が、ちょっと変わった塾をされているよ」との情報が・・・

空手稽古と学習の共通点とは?!この2つの組み合わせによって培われる能力とは?!
自ら進んで勉強する自主性のある子どもが育つ?!
そんな新しい学習方法を確かめるべく伺ってまいりました!

文武くん空手道算数教室ってどんなとこ?

―真の文武両道を実践する学習塾。一体どんなカリキュラムでどんな指導をされているのか、物凄く興味があります。まずは、学習の流れから教えて下さい。

瀧川さん(以下、瀧川):空手の基本や形の稽古を集中して30分行い、心身ともに学習に最適な状態を作ります。空手の技術向上のための稽古ではないので、上から「教える」わけじゃないんです。見て「マネをする」というスタンスです。その後に学習を30分ですね。

―学習の時間に使われるテキストはどのようなものなんですか?

瀧川:完全なオーダーメイドの学習材です。テストを通して、子どもたちひとり一人の頭の中をスキャンして、分かることと分からないことを明確にして、子どもの頭の中の学力地図を作るのです。頭の中の学力地図をもとにして、子どもたちひとり一人に学習材を作ってあげることで、子どもは先生から教えてもらわなくても、自分一人の力で学習を進めることができるようになります。また、計算だけできても算数ができたことにはなりません。図形も文章題もすべて自分の力でできるというシステムが必要です。このシステムを開発したのが“教えない学習”をコンセプトにした、通信教育で全国展開している“でき太くんの算数クラブ”です。このようなオーダーメイドの学習材と空手を組み合わせたことで、通塾生の9割の子どもの学力がアップするという学習成果が出ています。この成果には、正直言って私たちも驚いているところです。

―空手の形稽古については、どんな感じで行われるんですか?

瀧川:身体能力開発もオーダーメイドです。真の能力開発は、子どもが今現在どの程度の身体レベルにあるのかを徹底的に把握することから始まります。“教えない学習”のコンセプトは空手も一緒です。

―自分で学ぶために必要なことってなんですか?

瀧川:「自分が集中しようと思ったときに、自由に集中できる」スイッチを持つことです。自分の意志で集中できるスイッチです。このスイッチを持っている子は、学力も伸びるし、空手もうまくなります。このスイッチを作るには、「形(かた)」の稽古がすごく大切です。だから、練習でなかなかできない子がいても、根気強く指導します。形の上達と共に必ず集中力はアップするからです。

文武くんの始まり

―どうして、文武くんのスタイルの学習塾を始めようと思われたんですか?

瀧川:私は空手指導を生業としてきました。しかし、空手は野球と違ってマイナーなスポーツという印象がありますので、もっと多くの人に空手のすばらしさを知ってほしいと思ってきました。私が注目したのは、空手の指導体系からくる教育性の高さです。
特に、空手の持つ武道としての教育力は、都会育ちの子供たちに大いに役立ちます。都会の子どもは自然の中で思う存分に遊ぶ「場」がありません。自然の中での遊びは、子どもの体を鍛え集中力を身につけるのには、うってつけです。そこで、畳1枚分のスペースがあればできる空手と学習という2つの組み合わせを実践し始めたんです。

―学習はどんなスタートでしたか?

瀧川:家庭学習支援の一環として当会に出稽古に来る東京大学の学生、院生を中心としたアルバイトスタッフによる土曜学習教室、プロ講師による特別指導塾、夏期合宿時の夏休み宿題指導などを希望者に向けてやっていました。黒帯(初段もしくは弐段)取得の子どもの内、約半数が第一志望の中高一貫校や有名私立中学への進学(あとの半数は受験せず)するなど、実際の成果も出ていました。ただ、残念なことに黒帯取得前に受験のためという理由で、道半ばにして退会していく子どもが出ることでした。 毎年このような子供を忸怩たる思いで見送るしかない自分の不甲斐なさを感じ、何か良い方法がないものかと常に模索していたんです。

―そんな時にでき太くん算数クラブと出会ったわけですね?

瀧川:そうです。知人からの偶然の紹介で「でき太くんの算数クラブ」の松本修二先生に出会いました。松本先生は30数年前より学習塾を経営され、その経験とノウハウをもとに児童向け算数学習材を開発して、通信教育「でき太くんの算数クラブ」を全国展開している教育のプロです。そこで、文と武、お互い専門分野で培ってきたノウハウを持ち寄り融合させることで、これまでに例のない新しい能力開発を行い、真の「文武両道」に挑もうと思いました。

文と武の融合

―運動と学習の共通点はなんだと思いますか?

瀧川:自分で学ぶという姿勢と、集中力です。逆にいつまで経っても上達しない子の特徴として目線が全く定まらないというのがあります。目線がしっかりと目標物を捕らえている子はどんどん上達します。上達しない子がなぜ目線が定まらないかというと、集中力がなく、学習することへの自主性がなく、想像力に欠けるからです。

―子どもに自主性のスイッチを入れさせるには?

瀧川:子どもが自主性のスイッチを入れるには、まず自分の能力を肯定することだと思います。「自分ならできる」という自信が必要です。
そのためには、「自分の力で達成できた」という成功体験を、子どもたちにたくさん経験させてあげる必要があります。

―日常の生活態度も変わってきますか?

瀧川:変わりますね。例えば空手の稽古中でも、やっぱり最初は言われるから挨拶しているだけなんです。そこで心をなくした”形式ばかりの挨拶”が失礼や無礼にあたるということをしっかり教えると、相手の”間”まで配慮した挨拶ができるようになります。こういう挨拶ができると、「相手に自分の心が伝わる」という体験を体を通して経験することができます。こういう挨拶ができるようになると、相手と自分の人間関係がスムーズに進むことを知るようになります。このように挨拶が大きな意味を持つことが分かると、子どもはきちんとした挨拶をするようになります
そういうところから生活態度が少しずつ変わっていくんです。 

子どもの能力の差とは?

―ところで、最近の子どもと昔の子どもの違いってありますか?

瀧川:最近の子供と昔の子供に本質的な違いは感じていませんが、親の経済格差には大きな違いを感じますね。経済格差が、子育てや教育に大きな影響を与えていると思います。

―子どものために、各家庭でしてあげてほしいことってありますか?

瀧川:「文武くんの空手道算数教室」では、ハンコですね。子どもは承認欲求っていうか、認められたい気持ちがすごくありますから・・・。お母さんたちは忙しいので、稽古やプリントをやっている子どもをずっと見ている時間はないかもしれない。ただ、やったことを認めてあげてほしいと思っています。 「文武くん」では”親検”という大きなハンコを、「親御さんがプリントを見た」というしるしとして、押してもらうようにしています。何でこれが必要かって言うと、子供は親から認められるのが一番うれしいしいことだからです。日々の小さな困難を乗り越えた子供を大人がほめて認めてあげる。「親が我が子を認めてあげる」ということが、子供が自分の力で困難を乗り越える原動力になるのです。私たち指導者や親が子どもたちにできることは、そのようなエネルギーを与えてあげることだと思うんですよ。

―勉強ができる子とできない子の違いは、一言でいうと・・・?

瀧川:くり返しになりますが、集中力そのものです。私が教えていた子どもで、本当に勉強ができる子っていうのは、例えば電車が通るたびに音がするようなうるさい教室でも、パンと音が消えちゃうんです。電車に限らずどんな状況でも音が消えて集中できます。
この集中力の違いが積もり積もって、大きな能力の差になってくる。こういうことは、もうたくさん見せてもらいました。だから、もって生まれた能力を最大限生かすための条件というのは「集中力」です。もっとも最近では複数のことを同時進行できる高い能力を持った子どもも出現し始めましたが・・・・。

―逆に、できない子はどういう子ですか?

瀧川:本を1冊まとめて暗記すればテストができるという、即席ラーメンみたいな勉強法をしてしまっている子です。確かにこの勉強法でも、ぐんと成績が上がることもあるかもしれません。けど、これは本当の実力にはならない。「文武くんの空手道算数教室」でやっていることは、初めはぐんぐん伸びないように思えるかもしれませんが、あるところから一気に伸びる。定期預金でも、福利の定期預金はある時期からどんどんお金が増えていきますね。これは、数学で言えば指数関数で伸びていくからです。真の学ぶ力とは、こういうものだと思います。

―この先、将来的にはどんな展開を考えていますか?

瀧川:学習障害や発達障害など障害をもったお子さんが、最近たくさん増えてきました。彼らは運動能力、特に平衡感覚がよわいと思うんです。でも、脳が発達してくる幼児の時から「文武くん」で集中力を養ったら、学習面では障害者と思えないような発達をしていくんじゃないかと思っているんです。これは、大人になってからではダメだと思います。体と心が急速に発達する幼児や小学校低学年の時期が最適ですね。それから、今、「文武くん」の英語版を作っているんです。今後は、空手という日本の武道と日本式の算数をセットにした「国際版の文武くん」を世界に出していく計画です。これは、来年からやっていこうと思っています。学力を国民の平均値で見ると、日本は世界のトップレベルです。これは、伝統的な武道の精神と日本人のち密さによるものだと思います。「文武くん」はこの2つを兼ね備えていると思います。

―瀧川さん、有難うございました。

文武くんの教育目標は「自分の能力を全肯定できる子どもを育てる」という点に置いているそうです。心身ともに子どもの能力を開発し伸ばすカリキュラムとは、文も武も「自分ならできる」という自信を持たせることから始まるのですね
真の文武両道への道は、確かにここにあるのかもしれません。

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