#14  エネルギー自由化本を読んでみました!その①『知っておくとメリット絶大電力・ガス自由化の話』

 電力小売全面自由化のスタートまで、いよいよあと数ヶ月となりました。次いで2017年からは、都市ガス小売全面自由化もはじまります。ということで、今後、私たちを取り巻くエネルギー環境が大きく変わっていくことは間違いなさそうです。

 都市ガスの変化もさることながら、それ以上に画期的なのは、戦後続いてきた電力大手の独占販売体勢が崩れることだと個人的には考えています。80年代中期に広瀬隆氏の『危険な話』を読んだあたりから原発や電力について(漠然とですが)考えるようになったこともあり、今回の流れには大きな期待を寄せているのです。

 ただし、それほど偉そうなことをいえない自分がいるのもまた事実。なぜなら、気になりながらも放置したままにしてきた疑問点はまだまだ多く、しかもその大半は「聞くに聞けない基本的なところ」だったりするからです。同じような方は、意外に多いのではないでしょうか?

 そこでおすすめしたいのが、『知っておくとメリット絶大電力・ガス自由化の話』(川本武彦著、幻冬舎)。著者は、創業70年の実績を持つ総合エネルギー会社である「株式会社サイサン」の代表。これまでにも、新時代エネルギーのあるべき姿について模索し続けてきたのだそうです。

 本書ではそのような実績に基づき、電力やガスについての“知っておきたいこと”を解説してくれているわけです。多くの場合、このテの書籍には難解なものが多く、それが読む気を失わせる要因でもありました。しかし文体は柔らかく平易で、知識ゼロの人でも無理なく理解できるように書かれているため、抵抗なく読み進められます。

 第1章では「電力・ガス自由化がもたらすもの」について解説し、第2章では電気料金、ガス料金の仕組みを紹介。第3章では「自由化によって変わる私たちの生活」に焦点を合わせ、第4章ではエネルギーの有効活用を提案しています。電気・ガスそれぞれの特性やメリット、デメリット、可能性、限界などを正しく把握することができるような流れになっているのです。つまり、ここまでを読み込めば、電力・ガス自由化に関する基本的な事項を把握できることでしょう。

 しかし、さらに重要なのが最終章にあたる第5章です。なぜならここでは、自由化が実現したあとに消費者が意識しておくべきポイントが示されているから。電気や都市ガスが自由化されれば、多くの事業者が参入し、競争がはじまることになります。そのとき私たちは、なんらかの基準によって適切な事業者を選択しなければなりません。

 さまざまな料金メニューやサービスのなかから、どれかを選択しなければならなくなるわけです。そんなとき、どんな基準を自分のなかに持てばいいのか、どんな事業者に、どんなサービスを求めるべきなのか、あるいは次代へ向けてエネルギーとどう向き合うべきかなどについての、重要なヒントが散りばめられているということ。

 著者自身が事業者ということもあり、やや自社の話題に偏りがちな部分もありますが、それでも4月までに蓄えておくべき基礎知識は、この一冊で充分にクリアできそうです。

文:印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。ライター、書評家、音楽評論家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。

INDEXヘ戻る

Follow us!