#42  持続可能な生きた建築コミュニティカフェ Salon de AManto (後編)

今回は大阪梅田に近い中崎町にある、迷宮のような長屋にあるコミュニティカフェSalon de AManto代表junさんのインタビュー後編。

廃材を利用した長屋をリフォームしてギャラリー、カフェ、映画館、劇場、レンタルサイクル、ライブハウス、ゲストハウス、Barなどjunさんが運営する一角は観光名所にもなって国内外の人たちも多く訪れる場所になった。AMantoは全部手作りDIY。材料は買わない、ここからゴミは出さない。出たら廃材をもう一度使って抜いた鍵も叩いて伸ばしてもう一度使えばいい。持続可能な建築。

ここまでの前編から、今回は、ジュンさんが自分で作り始めるところから後編はスタート。そこにはマヤのカレンダーの話しも出てきて時間の螺旋階段が進んでいきます。

—中崎町で自分でお店を作り出すわけですが、最初の2ヶ月間は無給ですよね。どうしていたんですか?

ジュン:最初に興味を持ってくれたのが学校の先生だったりするでしょ、学会で発表した後で授業で喋るから、生徒が来るようになるんですよ。改装の間に1127人も来たんですから。するとね、その人たちがすごく盛り上がりを見せて手伝いまでしてくれるようになりました。

—ガウディの建築みたいですね(笑

ジュン:僕はオープンの日を7月26日に決めていたんですよね。やっぱり出来るかどうかわからないから、終わりだけは決めていたんですよ。2001年5月2日に初めてここに入って。7月26日はマヤ暦で元旦なんです。

—えっ、僕も20年以上マヤ暦で生活していますよ(驚。

ジュン:そうなんですね!!ホゼさんここで講演していただきましたし、うちにも泊まっていってくれました。僕はテレクノトンのキットの保管者でもあるので、あと200個ぐらいありますよ。この店もマヤ暦で動いてますよ。

—マヤ暦はどんなものなんですか?

ジュン:1年が13ヶ月あるんです。28日周期で13ヶ月あるんですよ。13ヶ月だと364日でしょ、1日足りないでしょ。その日は「時間を外した日」とすることで、例えば日曜日が1日だったとしたら、毎月毎月日曜日が1日になるんです。4週間で1ヶ月だから、すごく規則正しい生活が出来る。

—人間だけ宇宙の運行のリズムで生きてないから、そのリズム自然のサイクルに戻るカレンダーなんですよね。

ジュン:リズムが一定しているということですよね。28という月と女性の生理と同じ周期。

マヤ暦 自然のサイクルに戻るカレンダー

ジュン:僕がやっているアートは天然芸術という名前でね。英語ではEARTって書くんですけど。EARTH地球のHを抜いてるんです。ARTというのが最初に僕がやっていたエンタメ。使い捨てで絶えず新しいことをしないとダメ。環境破壊とゴミが出るアートなんですけど、ホゼの影響でもともと、次の世代に伝えるために僕たちがやっていた芸術活動、例えば夏祭りとか、収穫祭であるとか。その芸術は学校であり神話を伝える生き方の勉強であり、コミュニティの序列とかルールを学ぶ場所だったわけでしょ。そのための芸術は古くならない。毎年同じことをするのだけど、斬新であることよりも新鮮であることが大切だなと。

斬新であることよりも新鮮であることが大切。

ジュン:そういうのを自分のメインにしようと思って。ここで得た結論は天然の芸術家になること。自然のための自然に人間が帰っていくための芸術活動。今は難民の受け入れとかやって、いろんな外国の方が来るようになって、するとイデオロギーとか宗教で話をすると絶対に決着がつかないからアートが一番良いんですよ。

—感覚的なことですものね。

ジュン:イスラム教徒もキリスト教も仲良くなれます。

—そしてマヤ暦の元旦にオープンしようとして、どうしたんですか?

ジュン:オープン前に丸ノコで28針縫うケガをするんですよ、徹夜の連続で疲れていてね。そこで入院してたら。噂を聞いた知り合った人がお見舞いに来てくれたんですよ。すると、みんな頑張っているって、言うんですよ(笑。

—お客さんが店を作っていたんですね(笑。

ジュン:はい、裏から入ってみんなで作ってました。オープンの日には150人くらい、ここに来てくれましたね!

—すごいですね!

ジュン:改装状態をオープンにして「改装パフォーマンス」にしてブルーシートで囲わなかったから広告宣伝になったんですよ。その中のメンバー何十人かが、出来上がってもったいないから、寂しいからって、そのままスタッフで残ってもくれました。

結果が動機になっていない、純粋に楽しい時間

—みんなをそれほど共鳴させた部分は何だったでしょうか。

ジュン:その人たちは結果が動機になっていないですよ。その時が楽しい。何かしたからこれが貰えて、というよりも行為が楽しい。だから会社終わったらみんな来て、休みでも来たりとかね。給料払えないし無理だよって言っても来てくれる。それで申し訳ないから僕がここで地域通貨を発行したんですよ。

—地域通貨の単位はなんですか?

ジュン:マント。1マントだけアマントと言います(笑。それでやりとりするようにして、当時からマイナス金利で使わないと腐るようにしてね(笑。映画会やギター教室、芝居をやりだし、自分達が作った場所だから使用料なしでポイントでいろんなことが出来るようにして、それがのれん分けして広がっていったのがこの場所「Area AManTo」ですね。

—それが今では14店舗。凄いことです。

ジュン:最初は暮らしながらお店をやる。そんなスタイルを提唱していて店も増やすつもりもなくてね。でもね何年かしたら地域活性化イベントに呼ばれて行くようになったんですよ。

—リノベーションの代表者みたいな感じですかね。

ジュン:そうですね、話を聞いて欲しいとか、面倒見て欲しいとか。大阪以外でもアマントを作って欲しいと言われるんだけど。そんなフランチャイズみたいなものを作る気はないから、やり方を教えるから勝手にやってくださいってね(笑。

—立ち上げの時から子供は最初の飲み物無料にしていたんですか?

ジュン:最初は、僕がお金が無いからみるみる痩せていったんですよ。すると地域の人が食べ物を持って来てくれるんです。これは毎日、食べ物もらえるから、これだけでやってみようと。本当にお金が無いからね。結局、改装中の3ヶ月間は全く自分のお金で食べてないですね。

—全て地域の人のほどこしですね。お坊さんですね。

ジュン:人間の体は3ヶ月で細胞が全部入れ替わるでしょ、だから僕の今の細胞は地域の人のほどこしで出来上がってますよ(笑。

—無料のジュースは、その還元みたいなことですか。

ジュン:そうです。地域の人にとっては店がオープンしていても関係ないから毎日、食べ物持ってくるんですよ(笑。それで、その場に一緒にいた人で全員でシェアするなら持ち込みOKにもしたんです。

—それは今も変わらずですね。

ジュン:はい、地域のニーズとして鍵っ子が多いんですよ。ママが帰ってくるまでが大事で、その間にジュースを飲みにくる。2杯目からは手伝いしたら無料で飲めるようにしています。

—地域問題もここで喋っていると自然と出てくるわけだ。

ジュン:喋って出てくるニーズは社会問題にダイレクトに繋がっていてネットに出てくる以前の情報ですからね。

—本当に情報の源泉みたいな。

ジュン:僕は非常識以前の未常識って言ってるんですね。非常識は市場の5%超えたら非常識と言われるけど、それ以下だと、何をやっているのかわからない(笑。ここには、そんな人も情報もすごく集まってきますね。

—当時と地域の問題は変わってきましたか?

ジュン:一番変わったのは、その人の動機ですね。どうしても歌手になりたい、有名になりたいです。でも赤ちゃん出来てしまってどうしましょう、って。そんな俺に聞くなよって(笑。相談にも昔は夢があったんですよ。

—今は夢がないですか?

ジュン:ないですね。生きることが精一杯。なんで生きているのかわからない。そんな子が大半ですよ。あと、これをやっていいですか?ってイチイチ聞くとかね。そんなの全部やっていいんですよ(笑。

—それは、親に虐げられてるからですか?

ジュン:15年前のジュース1杯無料の子供たちはタメ口なんですよ。みんな元気でヤンチャだった。でも今の子供は敬語でお行儀がいいですね。言われたことはちゃんとやるけど、それ以外はちょっと。

—少し寂しいですね。

ジュン:そこで、僕らで手に負えない子はソーシャルワーカーもメンバーにいるので行政サービスに繋いでいくんですね。それぞれ問題の専門家がいるので、その辺はだいぶ安心しました。

—バトンタッチしているんですね。

ジュン:だから、その間をつなぐこんなよくわからない場所が必要だったということなんでしょうね(笑。

—ジュンさんは韓国でも活動されていますが、貧困問題が日本の未来をイメージさせるという話も聞きますが、いかがでしょうか。

ジュン:大学の授業料がすごく高くで格差が広がっていますね。奨学金を返せなくて、初任給が日本のお金で7〜8万円しかなくて希望が見出せなくて、即クビになるでしょ。

—個人商店も無くなってきてますか?

ジュン:ないですね。自殺率は日本を抜いて1番になりましたね。それも20代の自殺ですよ。スラムも出来てきてますからね。そんな場所に行くんですけど、カンナムの摩天楼の近くに不法占拠で暮らしている人たちもいますね。

—そこにもジュンさんと同じような活動している人もいるんですか?

ジュン:今は呼んでもらったりして交流があって繋がっています。これは韓国だけじゃなくて、フィリピンとかインドネシアも同じ傾向がありますね。

—残念ながら、それが日本の向いてる方向なんですかね。

ジュン:韓国は伝統文化を潰しちゃって、特に儒教だから毎月お盆なんですよ。いろいろやることが大変じゃないですか。それに占い師が来て儀礼をする伝統があるでしょ。それをアメリカナイズすることでイエス様だけ信じて、すごくシンプルになったんですね。それでお金だけ稼げば良いとなった問題点と、それの反省が生まれてきているという状況ですね。

基本ポリシーは「来るもの拒まず去るもの追わず」。

—最後なぜ、ジュンさんのところに人は集まるのでしょうか(笑。

ジュン:ここの基本ポリシーは「来るもの拒まず去るもの追わず」。また戻ってきてもOKだから。行き倒れていたバックパッカーを助けたら、そのまま何年間居ついたとか。そんなこともありました。そして、その人はまた旅立っていくわけです。

—結局、口コミで広がっていくんですね。

ジュン:それしかないですよね、そんなことホームページも書かないし(笑。

—生活に困ったらココに来てね!とかね(笑。

ジュン:そんなことを書いたら、ここ潰れてしまいますから(笑。

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