#60  ~中小企業の後継者問題を深堀! そこに僕らのビジネスチャンスは?<前編>~

連日、紙面やソーシャルニュースなどに「中小企業、2030年消滅?」「後継者不足で関西の経済衰退」「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能に」など、日本の経済の未来が衰退し、今の子供達の未来に暗雲が立ち込める記事が踊ります。
10年後には7割の職種が消えると言われている今、日本人はどのように仕事を考え、選択していくべきなのか・・・。
若者だけではなく、中高年が何をキャッチし考えなければならないかそのヒントを探るべく、毎年2,000人を超える経営者と会っている日本経営合理化協会 理事長の牟田太陽氏に、今の日本の現状と展望をお伺いしてきました。

中小企業の後継者問題

ー 早速ですが、中小企業が衰退とありますが、2つあるんですか? 引き継いでも機能しないということと、本当に担い手がいないということと

牟田「いま中小企業庁に登録されている企業の数は、諸説色々ありますが420万社前後あると言われているんですね。新しく出てくるところもありますし、消えているところもあります。そのうち9割が中小企業って言われているんです。我々がやっていることはその中小企業が元気にならないと日本が元気にならないということでその中小企業に特化した勉強会とか経営のお手伝いを全般的にやっている会社です。日本では全法人数の実に9割が中小企業と言われていますが、そのうちの6割が後継者がいないという状態です」

ーこれは限定した業種ということではなくて?

牟田「全体的な問題ですね。そもそも継がないといって会社に入らないというなど色々な理由がありますね。弊会で毎年やっている全国経営者セミナーでは、以前は700社ほどの参加者の中で、女性の経営者というのは1割もいなかったんです。しかし、最近は、女性が増えてきました。これは息子さんがいないからお嬢さんが継ぐという様々な要因があります。 娘さんが継いで上手くいくこともありますし、婿さんが継いでうまくいっている会社もありますけど。娘さんが社長で婿さんが部下とかいうパターンは苦労しますね。大体8割のパターンで別れちゃったりとか・・・

ー例えば社員の中で下から上へ上がってきた人に引き継ぐことはできないのですか?

牟田「ありますが、目線がちがうんです。よくあるのは営業から上がってきた社員と生産とか工場とかを経験して上がってきた社員とですと、営業の人は営業の、生産の人は生産の現場しか見れません。経営全般を見れる頭だじゃないんですよね。
ですから社員の中から選ぶには、早くからそういう人を見つけて全体最適の頭を作って経営を勉強させなければいけません。しかし、確率的にそうはいないんです」

ーそうなると家族に引き継いでも一緒じゃないかと

牟田「うちには16万社出入りしていますが、同族ってどうなのって言われますが、やはりカエルの子はカエルみたいなところがあってDNAをひきついでいる場合が非常に多いです」

ー経営者がいないということで会社が潰れてしまうということがあるんですか?

牟田「今はM&Aが増えています。大きい同業者が買い取って、経営者が居ない場合、長男に自分の会社を継がせて、営業専門の会社にして、次男には地方の買い取った会社を製造中心の会社にして継がせるとか、上手くやっています」

社員は血液みたいのもの

牟田「しかし、先ほどDNAの話をしましたが、社員もまたトップが違えばDNAが違うんですよね。社員もまた似た人が集まっている。M&Aで買収した会社に行くとこれが同じ会社かというほど違うのです。
しかし、三年、五年経つとそれに合わない人は出て行きますし、新しい人も入ってきますし、会社って5年10年かけて、社員って血液みたいなものですから、合わない人って自然淘汰されてしまうんですよ。」

ーそうやって地方豪族のような会社が増えてきているって聞いてますけど

牟田「お客様でも事業の多角化が増えていますね。
昔は一つの事業で立ち上げてバーッと大きくなるっていうのが多かったですが、今の時代は無理とは言わないですが難しいじゃないです。だから小さい会社をいくつも立ち上げて、例えば1億くらいの会社を100個つくったら売り上げが100億とか連結で。そうような事業多角化とか増えています。」

ーということは地方が衰退しているとよく耳にしますが、そんなことは関係なく粛々と成長している企業もあり、 事業継承の問題はあるけど、実は実力ある中小企業は成長しているてことですか?

牟田「そうですね。人口が減っているから企業数もある程度減ってくるのかなとは思いますが」

ー 一方でベンチャー企業ブームもありますが、事業を継続するのは難しいですよね?

牟田「弊会のお客様は比較的永い会社が多いです。この間弊社の50周年祝賀会があったんですが、参加されたお客様を見てますと、同じくらいで創業された方が多いので2代目3代目が多かったです。私と同じくらいの世代が多いですね。
やっぱり悩まれている方が多いです。6割が後継者不在ですから、「普通にやっていれば中小企業は生き残れるから大丈夫だ」って言っているんですよ。周りがいなくなるから(笑)
私は「業界」という言葉が嫌いで。「景気のいい業界ってどこですか?」とよく質問されるのです。でも今そんなにいい業界なんてないと思うんですよ。どの業界がいいかっていってしまえば全てが悪いんです。しかし、その「業界」の中でも、凄い良い会社と悪い会社があるんです。その差って何かというと、経営環境に対応出来ているか、出来ていないかだと思うのです。そこをどうやって環境に合わせて自社を進化させていくかということに尽きますね。」

ーある程度社会の変化を感じて自分たちもそれを取り入れていけるかいけないか?

牟田「そうですね、外的要因というのも大きくあります」

ー法律が変わったりなどしますからね。後継者がいないっていう情報にふれてぱっと考えたんですが、都会でくすぶっている中高年とかと田舎の後継者が居ない会社を結びつけてみたら解決するのかなあと思ったのですが、そういう風にはいかないんですかね。さっき言っていたようにサラリーマンで優秀にやってきた人と、経営者としてやるのとはタイプの違いってあるのですよね。都心と地方の人的交流しても解決しないんですかね。

牟田「そうですねそういう考えも面白いかと思いますね。今代替わりしている会社は圧倒的に40代50代が削げ落ちている会社が多いです。先日、映画でマイインターンっていうアン・ハサウェイとロバート・デニーロの映画を観ました。スタートアップ企業というか、アン・ハサウェイがアパレルの通販の会社を立ち上げたんですが、あれよあれよと数百億の会社になったのだが、若い奴らに経験がない。そこで年寄りをインターンシップで取ろうということになって、そこに大手企業で役員まで上り詰めて定年退職でリタイヤしたロバート・デニーロが申し込んでくる。最初はぎこちなかったのだが、ロバート・デニーロの経験が生かされていって誰からも信頼されるという。その映画が私好きでして・・・ 地方の会社はそういうブレーンというか優秀な片腕というか人が圧倒的に少ないのです。」

ー情報の格差とかありそうですよね。東京でサラリーマンであった人が戻りそうもないですよね。そうなるとその会社しか知らない人がそのまんま成長していくようになっても仕方ないかってなりますよね。なんで後継者がいなくなったんですか?
やっぱり子供の数が少なくなっているとかですか?

牟田「組織っていうものをそう重要に考えてないことが原因だと思います。私は常に組織を5歳刻みで考えろと言っています。誰が何歳でどのポジションにいるかとか常に経営を流れとして考えてくださいと言っているんです。なんでいなくなったかといえばそれは先代のせいだと思うんですよね。それを考えて人を雇っていないというか。創業メンバーで等しく年齢重ねててやってきてじゃあ俺たち引こうかっていう時、息子と圧倒的に若い人しか残ってないという状態になって困ってしまうという状況になるのです。」

ー経験値がなさすぎるというチームが残っているわけですね。息子の方は若い世代ですからオペレーションしやすいとは思いますが、仕事のトラブルとかの対処法とか分からないですよね、

牟田「そういう時若い人が、こじらせたりするだけですから。対処できないからある程度年齢いった人が対処するとかバランスがいるんです。」

ーそういう時はベテラン選手も必要なんですね、それができているとしっかりしたチームというか強いチームができるわけですね。 40歳50歳で都会にくすぶっている人は地方に行ったら面白い仕事ができるかもしれませんよね。

牟田「なかなか難しいですよね。お前ちょっと地方行ってこいは(笑)」

ーでも中小企業って大阪とか関西とかってイメージですけど、東京も多いですよね。

牟田「ひろく北海道から沖縄までお客様はいらっしゃいますけど、圧倒的に東京のほうが多いですね。でも東京とかで勉強会とかをやると圧倒的に地方の方が多いです。」

ー情報格差を埋めようと?

牟田「とか、東京に営業所があるとか、仕事絡めて東京に来るとか。モチベーションが高いですね。」

ー後継者がいないといっても回りそうですよね?

牟田「でも売却したいという会社は多いですね。」

ーそうなるとアメーバみたいにくっついて、もはや中小企業とは言わないスケールになりそうですね。本当に淘汰されて。

牟田「小さいところと大きいところとの格差がおおきくなりますね。M&Aをやるような会社はそういうことの警鐘をならしていますね。」

▶︎▶︎▶︎後編に続く

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