#71  森と踊る 三木さんインタビュー

今年の花粉飛散量は平年の6倍になるとか!?
花粉症対策として山にどんぐりの木を植林しに行きたいなぁと思っていたところで、何とも魅かれる不思議な名前の会社に出会いました。
“森と踊る”株式会社―――――――― 東京の樹を東京で加工して東京の環境を作っていくという森の地産地消にチャレンジしながら、都会と人の中に森を育むことを謳うこの会社では、一体どんな取り組みが展開されているのでしょうか?
代表取締役のずーやんこと三木一弥(みきかずや)さんにお話を伺って来ました。

森と人の喜びから繋がりと循環を生み出す会社

林業はビジネスとしては成り立ちづらくなっていると言われる昨今ですが、森と踊るではどんな事業をされているんですか?

三木さん(以下、三木):大きく分けると二つです。
一つは「森イキイキ事業」。これは、森林再生や管理や間伐施業、木製品の製材や生産販売、リフォーム事業など。もう一つは「心の森事業」で、森を通して学ぶリーダーシッププログラムや森の可能性を知ってもらうイベントなどを開催しています。

具体的には?

三木:今、国内には放置されている山が沢山あり過ぎるんです。なので、国産材に‟山の再生”という付加価値を付けることでビジネスとして成り立たせるチャレンジを続けてます。あとイベントは、自然回帰という価値観の元で企画してます。
具体的にやっていることは…例えば、間伐体験だとか、竹籠ワークショップとか。あとリフォームに間伐材を使って、依頼者と一緒に床はりをしたりとか。

山の手入れ方法の一つである間伐には、皮むき間伐って方法を用いているそうですが…?

三木:間伐って木が繁り過ぎるのを防ぐために間引きすることなんだけど、私たちがやっている皮むき間伐は、木の皮を剥いで、乾燥して立ち枯れにさせてから切り倒す方法です。切り倒した木も驚くほど軽いので比較的楽で安全に作業が出来るのが特長かな。
間伐体験は、子どもや女性など体力に自信が無い人でも気軽に参加できる作業もあるから、誰でも参加して貰えます。
間伐した木はどうなるんですか?

三木:製材所で加工して、床を張ったり建物を作ったり。
でも、家の柱とかで6mの木材が必要だったりすると、間伐材だと凄く手間がかかります。ほったらかされて光を求めて曲がっているから、普通のまっすぐで立派な木だったら何本も取れるのが、1本の木から下手したら1本みたいな。 でも、残りはポイっていうのは嫌だから別のものにする。手間はかかるけど。人間でもオール5じゃない人はダメみたいな社会はギスギスするじゃん。
で、誰も泣かない仕事がしたい。バナナの叩き売りみたいに、誰かが泣いて値段引き下げてって言うのが今でしょ?その泣くをどんどん他の国に押し付けたり、未来の誰かに押し付けることもしたくない。

だから、作業を体験して貰うことで適正価格というか、その価値を知って欲しい、と?

三木:そう。例えば、もしあなたが家を作る時に生活者として何をチョイスするかを考えてみて欲しいってこと。オラウータンの森を住めない森にしてしまうか、再生する力を残すことで生き物の為の豊かな森を守るのか。その為に木材量が多少高くなったとしてもね。

山の力と自然のスパン

ぶっちゃけ、今の日本の山は超危機的状況なんですか?

三木:僕は全然危機感を持ってない。自然の力はそんなに弱くないと思います。
人間が困るよってだけの話じゃないかな。今コンクリートでパッチあてしたところが災害で土砂崩壊とか起こるのって、ほとんど人災だと思う。大地がちゃんと呼吸できるようにしてあげていれば、大地は勝手に再生していく。それを息苦しくするからあえて壊してるっていうか。

困るのは人間って…確かにこちら側からだけの見解かもしれないですね。

三木:自然のサイクルと、人間のサイクルとではスパンが全然違うんですよね。自然は20年とか100年とかかけても自分たちの住み心地のいいところにするよって自信満々でいるから。僕の預かっているこの土地は200ヘクタールあるんだけど、当初は全然追い付かないって焦った。けど、やってるうちに自然はなんにも困ってないなと。自然にとっては、この期間も瞬きしてる一瞬みたいなものだな、と。

自然の力はやっぱり偉大なんですね?

三木:だから、自然の恵みをどうやったら得れるかって知ることも大事じゃないかな。それが知恵だと思うしね。人から何も取らなくてもいいし、たぶん心の平安に繋がる。人間の求めてるものって心の平安でしょ?もしくは喜びだったり。
それをまず自分が実践して生きれればと思う。そして、それをみんなと分かち合う価値があるというか…やっぱり一人でできることって限界があるけど、みんなでやればもっともっと自然と共生しやすい。

林業じゃなく、森業

三木さんは「林業ですか?」って言われると、実はちょっと嫌だとお聞きしましたが?

三木:嫌っていうか(笑)、自分の中で森業かなと。
例えば林業は木を切って材木にすることで価値を生み出す仕事だけど、その下の切株の方も大事だと思う。大地と森がどんなふうに次の世代に引き渡されるか。それをクリエイトすることが一番。そこから目を逸らすのはやめようと決めたので「森業です」と言いたい。
それにね、生きとし生けいるものだから、それを余さず最大限に生かしてあげたい。そのために手を惜しむのは…そこ惜しむとこじゃないでしょ!敬意を持ってかけるとこでしょ!と。で、かければかけるほど面白いんです。

その意味でも、皆でやるという広がりも大切なんですね!

三木:僕一人だったら手が回らないところにも広がるからね。
例えばカゴ網。蔦は木を育てる人からしたら邪魔だけど、カゴ網する人からすると資源。だから、ここに来て貰って「こういう山にしていきたいんだ」ってことを分かった上で使ってくれるんだったら、勝手に商売してくれていいよって思う。これ売れますよ!て言われるけど、それを売るまで手が回らん!だからあなたがその部門のビジネスをやってくれたらいいよ!て。それで儲かったら還元してくれたらいいしね(笑)。

創業の想いとこれから

ところで、元々は何をやられていたんですか?

三木:20年くらいサラリーマンでした。農機具を作る会社だけど、僕は下水処理場とかね、浄水場とかいわゆる水を浄化する仕事の部署。
   その中で水の世界を見てると、人間が科学技術で何か処理することは、一時的には必要かもしれないけど、根本的には解決しないんじゃない?て思うようになった。やっぱり自然界に寄り添わないとって。病人に例えたら、お医者さんが病気を治すのはいいんだけど、病気が減ってるんですか?むしろ増えてるよね?ていうのと同じことが水の世界でも言えるんじゃないかって。
そう考えたら、大きな地球の循環の中では、雨が大地に注ぎ、山から川へってサイクルがあって、本来はそこの浄化能力が大切で…てことに行き着いて。

山の再生に取り組む今の会社の始まりは、そこにあったんですね?。

三木:大分はしょってるけどね。色んなタイミングも重なって会社を辞めました。
   で、まず行ったのは林業に関するハローワーク主催の就労支援講座。ここで雇用先はほぼないことを知り…スタートは山を探すところからだった。
とにかく片っ端から山を使わせてくれる人を探しました。

全く一人のスタートから、ここまで広げて来られたんですね!

三木:今は林業みたいなこともやってるし、製材業みたいなことも建築っぽいこともやってる。イベントやったり、レクリエーションっぽいこともやってます。で、教育っぽいことや研修なんかもやったりしてます。 
総じて言えば、人と自然界がどうやったら気持ちよく共生して、お互いがハッピーになれるか?てことを自分たちが実験用のネズミになってやってみようと思ってるんです。自分が楽しいんだったら、人も楽しめる価値はあるはずと!

最後に、素敵な名前の由来を教えて下さい。

三木:togetherなんです。森だけが踊ってもダメ、自分だけが踊ってても仕方がない。一緒にダンスして、一体の、一対のような動きになるっていうのが理想で。
…て言っても、もともとは「㈱これでいいのだ」にしようと思ってたんですよ(笑)。けど、税理士とか周りの人にあまりにも反対されて、たまには人の話を聞こうと。
それで創業する時のメンバーで考えて30分で決まりました。今思えばこれは、授かった名前ですね。社名だけはホントよくぞこの名前にしたなって思ってます。

三木さん、有難うございました。


インタビューの後、山の中や作業場を案内して頂き、私も家族と皮むき間伐体験をしに来たいなと思いました。「滑らない靴と軍手だけ持って来てくれれば!」と三木さん。
大企業をやめてまで、独りで理屈抜きで山の再生に飛び込んでいる姿に感動しました。
森と踊るのプロジェクトには色々な形で参加できます。皆さんにもお気軽にお問合せ下さい!

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