#37  おがわ町自然エネルギーファーム 桜井薫さん

今回は電車に乗ってガタガタと埼玉県小川町からエネルギーの自給自足する社会を目指して活動する「おがわ町自然エネルギーファーム」 を訪ねてきました。子供達がくらす未来への種まきを合言葉に積極的にエネルギーと、その周辺の問題に取り組む思いを発電部のリーダー桜井薫さんに聞いてきました。桜井さんは自然エネルギー事業協同組合レクスタの代表理事や、国際NGOソーラーネットの代表、太陽光発電の施工等を請け負う会社エルガの代表など、3.11以前から太陽光発電の普及活動をしていた第一人者です。

ボク達はどんな未来を選択するのかチョイス オブ ユアーズ。さぁ、みんなで考えましょう。


—発電に取り組んでいる人と、生活者が先を見据えて考えながら一緒に共鳴してくれる人を増やしたいと思い、このwebマガジンを運営しているのですが、大きな電力会社が税金を使うように電気料金を吸い上げるヒエラルキー構造にも気付いたりして、僕たちなりにソーシャルアクションもやっています。でも正直ジレンマも抱えているのですよね。

桜井:よく勉強なさっていますね(笑

— いえいえ(笑。 取材していく中でそんなことが見えてきちゃたんですよ。 すべて民営化で切り売りして、自由化という競争化の元に海外資本がドンと入ってくる結果になりそうなんで、そうなると庶民はしんどい方向に行くと思っていまして。

桜井:自然エネルギーの活動も有機農法の活動どれも長くて時間がかかるんですよね。ポッと話題になることがあるけど、誰かが土を耕しているんですよ。それにやってる人は一握りです。ただそこにも目を向けれなくなってるんですよ。わかっても「賛成だよ」って声を上げれない状況が強いのが日本ですよね。

問題はどうやって根をはるか。

—村意識と言いますか。

桜井:根をはって行って、ふと気がついた時に古い建物が不用になっている。「電気はどこでも出来るじゃん!」そんなことが出てくる状況に持っていきたいです。そのためには小さな電力会社を市民があちこち作っていく。私たちも市民発電所を作っていますが市民発電所を作って、それをベースにして電力会社を作る。100件でも200件でも良いから、なんとか作り上げて行くことが根をはる作業かなと。

—先ほど、ファームの設置したソーラー発電は見てきたんですが、桜井さんの活動は、「おがわ町自然エネルギーファーム」に限らずに同じような市民発電所や電力会社を作りたいという声があればアドバイザーとして動くこともあるのですか?

桜井:僕らはまだ試行錯誤の最中だからね(笑。 人に教えるようなことはまだないですよね。でもね、例えばこれは太陽電池を作る機械なんですよ。

—ここにセットして作るんですか?

桜井:そうですね。普通はシャープさんとか京セラさんなどは、これのデカいのを持っているんですけどね。

—初めて見ました!この機械で大手企業は量産しているんです。

桜井:これはアフリカに行くのかな。これで出来る太陽電池が街灯になったり井戸のポンプになったりします。

—これでプレスするのでしょうか?ホットサンドみたいに?

桜井:そーです。ラミネーターって「パウチッ子」と原理は同じですね。この作り方もオープンにしていますから、誰でも出来るんですよ。それでアフリカの難民の人たちが何百枚と作っていますから。

自分たちで、自分たちの暮らしを作る。

—へぇー、瓦を作るみたいにですか。

桜井:アフリカでは雨期だけ農業やって、乾期になるとソーラーパネルを作っています。だから、このプロジェクトも自分たちで、自分たちの暮らしを作る。そういう切り口ですよね。

—現代版の百姓みたいなことですかね。

桜井:そうですね。自分たちで電力会社を作る。電気を作るのも、植物を作るのも教育まで含めて、全部自分たちでやっていく。そうじゃないとダメだよと、何をされるかわからないよって。そういうことだと思うんですよね。

—すごく心強いです。そんな発想を20年前から持ってたんですか。桜井さんの活動のきっかけは、どんなところ何でしょうか。

桜井:僕は原子核の勉強していました。元京都大学原子炉実験所助教の小出さんとは同級生ですよ。

—えっ、そうなんですか。

桜井:僕は落ちこぼれだったけれど、彼はまじめで。 (笑

—原子核の勉強していた時は最先端のエネルギーを追求してたと。

桜井:でもやってる時から、これオカシイなと思っていました。それでドロップアウトして就職しないでプータローになっちゃいました(笑

目で見える形で自分たちの暮らしを作りたい

—やっぱりオカシイんですね。

桜井:結局、科学技術と言いながらブラックボックスを作ってるわけですよ。本来はそんなもんじゃ無いでしょう。そんな思いがいつもありました。目で見える形で自分たちの暮らしを作らないと「砂上の楼閣」を作ってるのと同じだと、言っていました。「氷の上で火をおこす」みたいだとね。

—どんどん氷が溶けていくわけですね。

桜井:それで、僕は自分たちで作る技術を完成させて、それらを中心に動いています。先ほど見たメタンガスを発酵させることもそうだよね。

—以前にソーラーパネルやソーラー発電の技術者としてお仕事されていたわけじゃないですよね。

桜井:全然、違いますね。

—原子核の研究を辞めてからどうされていたんですか?

桜井:職人をやっていました。

—理系の頭脳を持ちながら現場仕事ですよね。

桜井:ボディは違いますから(笑。

—凄いですね。自分の理念といいますか、理想を追い求めて生きてこられたんですね。

桜井:そういうと格好が良いけど。結局はサラリーマンが出来ないだけだよ(笑。

—原子核から自然ネネルギーに移行した理由があるのでしょうか。

桜井:北海道の泊原発の近くの寿都町に行った時なんですけどね。その町の学校の校庭に風車が立っているんです。でも風が吹いてるけど風車は止まっていた。どうしてかって聞くと、北海道電力が買わないっていうんですよね。泊原発作るのに当時の北海道電力の宣伝は「電気が足りない」から作るってことでした。それなのに風車の電気は買わないっていうわけですよ。 まず寿都町がなぜ風車を立てたかというと、ちょうど泊原発から見える対岸なんですよ、でも、寿都町には他の自治体と違って電源交付金はでなかった。それなら風車を建てて、電気を作って売ろうとしたら買ってくれない。

象徴的な泊原発でのエピソード

桜井:その時に、役場の人が言った一言が、強烈に印象に残っていまして「あの電気を、ちょっと離れた養魚場に持って行って自分たちで使えれば、水温を上げれる、するとアワビや小さい貝を大きく出来ると。海水温度が1度上がると良い貝が出来るのに出来ないんだ。」と。

—それはどうしてなんですか。

桜井:作った電気がどうして使えないかって調べていくと、理由はすべて電気事業法の網にひっかかっていました。

—電気事業法は、市民が勝手に電気事業に参入できないってこと?

桜井:それも法律じゃなくて、内部規定みたいなもので全部決められてる。それがわかって、これじゃダメだとなって、自然エネルギーの方にずっと入って行きました。

—体制作りのために参加させないようにしてるんですね。

桜井:最初にあなたも言っていた、電力会社がお金を吸い上げて、全部バラまくっていう構造も全て、そこにあるんですよ。

—この太陽光パネルを作る技術は独学で勉強されたんですか。

桜井:インドネシアに原発が輸出されるときに、原発じゃなくて太陽電池を送る会を作ったときに、僕はお金がないからカンパ集めて送っていたんですけど。だけど、物をこちらから送っても結局はダメなんですよね。

独学でシステムを開発

桜井:あげるんなら良いけど今は販売してるでしょ。そうすると先進国の富がこちら、途上国の富がこっち、全部こちらに流れてくるわけで。そこで作れないかと思い、アーダコーダやってる間に出来ちゃいました。

—素晴らしいですね!

桜井:本当に出来ちゃいました。作り方もお金をかけて研究したものじゃないから、作り方もオープンにしています。

—単価は安いですか。

桜井:やっぱり大量生産には負けますね。でも、量が増えればコストは下がります。それに、可能性があるのは、途上国の電化支援というと火力発電所を作ったり、水力発電所を作ったりしていますよね。ODAとして日本や中国の企業が環境を破壊している。これが電源開発と電源支援なんですよね。今まではそんな方法しかなかったけど、全く別の発想の電源開発があり得るんです。小さな工房とちょっとした資本があれば、誰でも太陽電池が作れる。今支援しているアフリカのチャドだと年間300~400枚作っています。70Wですが、もっと作ろうと思えば作れるけど資金的な問題だけでね。

仕事をが生まれて電気を作る支援の実行

桜井:例えば、国の中央で訓練所を作って技術を教える。技術をえた若者が地方に戻ってそこで太陽電池を作る。自分達が作ったものを設置して、隣の家に明かりがつく。そんな工房が各地に点在する。太陽電池の作り方を教えれば、彼らに仕事をが生まれ、そして電化になる。

—材料は簡単に仕入れるのですか?

桜井:太陽光パネルの原材料を仕入れるのは難しいです。それを、どう相手に伝えるかが今の僕の課題です。自分たちで原材料をセレクトして仕入れする。その情報を伝えないと。最終的には組合を作りたいんですよ。全世界的な組合。

—技術や情報が全部伝わります。

桜井:小さな国の工房が集まって共同で仕入れをする。物流が変わるじゃないですか、すると、今のような大きな影はムフフ(笑。なくなると。

—良いですよね。それは希望があるし楽しい。

桜井:それが出来たら最高だなって思っているんですよ!自然エネルギー事業協同組合レクスタ、国際NGOソーラーネット、太陽光発電の施工等を請け負う会社はエルガ。そしてエネルギーを地元で分け合う仕組みを作ろうと「おがわ町自然エネルギーファーム<ONEF>」を作ったわけ。これ名前をつけるのも、いろいろ会議したんだよね(笑。

—この場所は研究所であり、工場であり、基地であり。すごい場所だったんですね。いやぁ、エネルギーの先輩の深い話ありがとうございました。

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