#46  町の課題に遊び心をプラス

皆さんは“スポーツGOMI拾い”という日本発祥の全く新しい競技があることをご存知でしょうか?
ゴミ拾いという社会奉仕活動とスポーツを融合させたという通称スポGOMI。
今回はスポGOMIの生みの親であり、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブの代表理事を務める馬見塚健一さんにスポGOMIの魅力と可能性を伺って来ました。

興味津々!スポGOMIって何?

―スポGOMIについて詳しく教えて下さい。

馬見塚さん(以下、馬見塚):ゴミ拾いをスポーツと捉え、競い合い汗を流しながらゴミを拾う競技です。健康な体づくりをしながら、社会奉仕活動もしちゃおうというコンセプトですね。合言葉は「スポーツで街をキレイにしよう!」

―スポーツと思うと、ゴミ拾いの概念も変わりそうですね?

馬見塚:そうなんですよ。「同じ目標に立ち向かう」「チームワーク」「達成感」「爽快感」など、スポーツ特有の素晴らしいキーワードが、参加者の皆さんのごみ拾いへの価値観を一新させるんです。
大会後、子どもたちがゴミを拾いながら帰っていく姿を見て凄く嬉しくなったことがあります。あの子たちは、来る時は多分ゴミを拾っていないと思うんです。
そんな風に参加者の皆さんの中できれいで暮らしやすい街づくりに貢献する気持ちが芽生えたり、ゴミを捨てないリサイクル習慣を意識したりするようになっているのも感じますね。

―ゴミ拾いのハードルをよい意味でグッと下げた感じなんですね。
大会はどんな風なんですか?

馬見塚:大会にはスポーツマンシップに則った簡単なルールがあります。
スポーツなので相手がいて、ルールがあって審判がいる。この3つを絶対尊重すること!あとは当日説明を受けて貰って、開会式、準備運動、作戦会議の時間を経て「ゴミ拾いはスポーツだ!」で一斉によ~いドン!です。競技後は表彰式などもありますよ。

スポGOMIの軌跡

―聞けば聞くほど、一度参加してみたい気持ちになってきますね。
そんなスポGOMIはどうやって生まれたんですか?

馬見塚:以前は地元九州の広告代理店で働いていましたが、30歳の時に上京して共同で企画制作会社を設立。この後すぐに大成功と大転落を経験しまして――――――
大成功したことで仕事内容と頂けるお金のバランスが乱れ、内部の風紀も荒れ、いろんなバランスが崩れました。
このままじゃダメだ、自分を見つめ直そうと思って、とりあえず自分の時間を作る為に早起きしたんです。早く起きてまずはジョギングを始めたみた。そしたら、自分の内へと籠りがちになっていた気持ちが外に向き始めていくんですよね。当時は横浜に住んでいたんですけど、この街にこんな所があったんだ~とか、ここからの眺めはきれいだなぁとか。

―ポジティブスイッチが入った感じですか?

馬見塚:そんな感じです(笑)そしたら一番気になったのがゴミだった。横浜ってきれいな街なのに結構ゴミがあるなって。
それから走りながら目についたゴミだけ拾うようになったんです。
それが始まりで、じゃあ次はスピード落とさないで拾えるかな?とか、段々ゲーム感覚になった。

―ゴミがゲームになった瞬間ですね!

馬見塚:そう!これスポーツになるかも?と思ったんです。大会を企画してみよう!って。
早速、知り合いの武蔵野大学泉准教授に持ちかけました。一番良い反応がありそうなのが大学生かなと思ったので、初めの大会は大学対抗にしようと決めて。

―そして2008年渋谷公会堂での第1回開催へと至ると?

馬見塚:取り上げてくれそうなメディアはNHKだなと思ったんです。だからより近いところで開催した方が取材して貰える可能性も高いなと。
実際は中々会場の使用許可が下りなかったり、開催までには色々な困難もありました。けれど結果18大学が参加してくれて、日本女子体育大学のバスケ部チームが優勝。NHKの取材を受ける彼女たちが「ゴミ拾いの参加は初。スポーツだから参加した」と返答しているのを聞いていて、これはもっと広げられるなと実感しました。

全国展開、そして世界へ

―今では活動が大きく広がって、全国各地で平均月8回の大会を開催しているとか?

馬見塚:今までの大会数は580回。累計参加人数61,258人、拾ったゴミの累計量(L)513,670Lになります。
全国に沢山の支部も出来ていますし、近年は海外での開催ケースも増えて来ているんです。

―支部というのは?

馬見塚:初めは私たちの主催で開催しますが、地域に根ざした活動として定着させて行く為に、地域での開催も応援しています。認定されると支部になれます。
私たちは開催のノウハウを伝えてシステムを売っているという感じでしょうか。
大会によって色々な独自性も出て来て面白いですよ。例えば、賞品が地域の物産品だったり、ゴミ拾いをしながら地元の名所を回るルールが加えられたり。

―最近では企業とのコラボ開催もあるそうですね?

馬見塚:企業内のコミュニケーションツールにもなりますし、おまけに地域貢献も出来る!
楽しいし、運動になるし、地域もきれいになるっていいこと尽くめですよね。
加えて大企業の社長さんが参加して下さるケースも多いので、社員さんたちにとっては社長さんと直接交流できるいい機会にもなっているようです。

これからの可能性

―増々広がりを見せそうなスポGOMIですが、今後はどのような展開がありそうですか?

馬見塚:今はどんどん大会のバリエーションが増えて来ているんです。
学校の教育カリキュラムと絡めたりとか、パラリンピアンと連携したりとか、あとは過疎化地域での開催などもしたいと思っています。
また、もっと広い視野で考えれば、私たちは何でもゲーム化できるノウハウを持っているので、ゴミ拾いの先の可能性もあるかもしれないと思います。
2020年に向けて「スポーツ」とか「環境」とかをキーワードに次の展開も考え中です。

―今後の展開も楽しみです。馬見塚さん、有難うございました。

「始めは戦略的なスタートでは決してなかった。それが今では、提供しているシステムの価値と頂ける対価が見合って来た」とおっしゃる馬見塚さん。
助成金や補助金制度を活用した活動とはまた別に、問題意識を持った活動をビジネスとして回せるシステムは、今後の私たちの生活や生き方に大きな可能性を提案して下さっているように感じました。
馬見塚さんの「四の五の言わずにやってみる!」という行動力に、私たちも学ぶべきヒントが隠されているかもしれませんね。

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