#43  泉佐野電力 柿本さんの場合

皆さんは泉佐野と聞いて何を連想しますか?
関西新空港の近くて、タオル・泉州玉ねぎ・泉だこ・岸和田だんじり文化圏などいろいろです。
その泉佐野市はネーミングライツや泉佐野モバイルなど新しい取り組みをしていて、泉佐野電力は、公募で選ばれ泉佐野市が3分の2、パワーシェアリング株式会社が3分の1を出資する官民一体の地域新電力です。これまで民間事業者が発電した再エネ電力を買い取り市内の公共施設34カ所へ供給、平成28年4月から低圧(公共施設)高圧(民間事業所)合わせて850カ所に供給しています。泉佐野電力の取り組みと、その思いはどんなものがあるのでしょうか。
我々、ハッピーエナジー取材班は新幹線で新大阪に着いて泉佐野を目指した。

―泉佐野電力の取り組みは革新的だと聞いて取材に来ました。

柿本:そんな事ないですよ。その辺は運用の問題もございますし、電力の調達価格というのが変動するでしょ、変動しない電力ならば、キャッシュフローも本来は自分のところで発電所を持っていて10年先を含めて計画が出来ますが、泉佐野電力には自前の電力は無いのですよ。

―関西新空港のメガソーラーの電気を仕入れているとききました。

柿本:それがですね、インターネットの情報を見られて言ってると思いますが結果的には買えなかったんですよ。

―えっ?それは条件が折り合わなかったのですか

柿本:相手先さんのソーラーフロンティアさんが事業をされていて、自前でも電力を売られてる部分もあり協力して貰えなかったのが最終的な部分です。それで次を探そうということで、大阪府南部にある岬町に買いに行ったみたいですね。でも、私が泉佐野電力に採用されたのが一昨年の4月なんで、そのあたりはタッチしていないんですよ。

―柿本さんは以前は何をされていましたか?

柿本:それまでは非常勤で市役所に勤めていました。定年終わって市民課窓口業務をやっていましたね。

大阪府泉佐野市にある泉佐野電力 数字に強い柿本さんが担当

―いきなり電力の部署に来たんですか?

柿本:税金を扱う部署が長かったので、税金に詳しい人で誰かいないか?みたいな感じだったんですよ(笑。

―数字に強い柿本さんに声がかかったと。

柿本:まぁ、そんな感じで引っ張られて(笑。

―柿本さんは電力系や環境系じゃないんですね。

柿本:まったく。でも機械科卒業なんで、ゼロではないです。勉強したので今は大丈夫ですよ(笑。
それで、関西新空港の電力もダメで岬町もダメだったので、近隣で発電されてるところへの紹介と、理事長が知ってる人もいたので買取が出来ることになりました。昨年1月からは大阪府内にある発電所から873キロワットを1つと、隣の貝塚市の三ケ山で750キロワット。河南町に第1と第2があって第2が420キロワットで、市役所庁舎屋上50キロワットで4か所合計でだいたい2メガ確保出来ました。まぁ、ようやくですね。やっと安心してるんですよ。

―泉佐野市の公共施設の屋根でも発電していますか?

柿本:それはやっていますが、屋根貸しなんですよ。市が設置してるんじゃないんですよ。設置する業者を募集(プロポーザル方式)しています。

―NPOとか市民団体向けにですか?

柿本:だいたい企業さんが多いですね。1箇所あたり50キロワットぐらいになります。それを集合させてやるのはなかなか、ゼロではないですがね。分散しすぎると管理も大変だろうしね。

―今は高圧の販売だけですか?

柿本:高圧は公共施設の34箇所に給電していますが、一般の低圧がね750箇所あるんですよ。これを切り替えないとダメなんで、鋭意やっています。

―泉佐野市民が特別に買えたりしないですかね?

柿本:その問い合わせは引っ切り無しです。「FITで綺麗な電気で原子力のアレルギーがあるので、いつから販売してくれますかって」ね。

―市民税とセット割引とかないですかね?

柿本:いろいろアイデア出してくれますね~(笑。

市民に対する絶対的信頼を持っている電力会社ならではの強さとサービス

―泉佐野モバイルとも連携してやっているのですか?

柿本:泉佐野モバイルさんは泉佐野市が出資していないのでね。逆にその部分を寄付することで、名前とか場所を提供している形ですね。そして泉佐野電力と提携して、そんな話もありましたよ。

―泉佐野市はすごいなーとイメージしていました。ガスの自由化もあるから泉佐野ガスもやるのかなって思っていました。生活インフラ全てを。

柿本:そら、やりたいですよ(笑。

―市民の思いと温度感と声は励みにもなると思いますけどね。

柿本:そりゃ、そうなんですけどね。

―泉佐野市民は何人いるんですか?

柿本:10万2千弱かな。世帯で見ると2万五千世帯弱かな。その1割と契約したとして、集金や請求書等の管理をどうするかなるとね(笑。

―あまり収益のボリュームがないですね。

柿本:でしょ。書類送ったりも考えていくと全然メリットないんですよね。市として政策的に総エネルギー的にね、ガスもモバイルも入れて良いんですよ。集合した請求書や振り込みも可能やからね。1件あたり電気で損しても総合的に利益を出す。総合やったらいけるけど、電気だけだと収支が難しいと感じます。

―値段的にもサービスの価値が見出せないですね。

柿本:市町村合併するとか、業務を提携するとか。出来るだけ人を減らすことで2重3重の投資を削減する目的で行くならありですけどね。

―思ったよりも向かい風がきつい感じですね。

柿本:現場はこんな感じですよ(笑。

―市長さんが先進的な打ち出しをやられるのは移住促進だったりすんですか。

柿本:もともと市会議員をされていて、若くして今までの泉佐野市の行政にかかる事業スキームを含めて縦割りで硬直的な部分を打破したい思いもあってですね。

泉佐野モデルシティの打ち出し

―市のネーミングライツを売ったのも泉佐野市ですよね。

柿本:泉の森」とか施設や市のネーミングライツもありますよ。

―先進的なことをいろいろ提案する市ですよね。

柿本:両面ありますからね。でも、高圧電力の部分は泉佐野電力は黒字なので、それを低圧に充当して総合的に株式会社ではないので儲けがでなくても、政策的に行くならありですよね。

―市民にとっては、こんなプロジェクトが住んでる場所にあると嬉しいです。

柿本:選択肢も増えて、市が出資してる団体なんで潰れることないと思いますよね。

―自分の住んでる街に電気代を払いたいと思いますね。

柿本:地産地消という部分でも太陽光発電であれば地元や近隣であれば、その部分(送電等)のロスが無いでしょ。万が一災害が起こったときでも、変電所単位で復旧が早く出来ますし、送電の距離が短いほど復旧が早く出来ますからね。スマートシティ的部分はありかなと思いますね。だから、いかに投資をするかですね、発電所を含めて安く仕入れが出来るもんが無いかなと。

生活インフラを行政が管理する未来モデルとは?

―電気料金は税金のように取られていくので生活インフラ自体を行政が管理していて自分たちに還元する目的を持って運営しているような自立した収益を上げていく未来モデルだと感じていました。こんな街が全国に増えていくと日本も面白くなるなーと。

柿本:それは事業計画がありきでね。でもね経済産業省なり総務省なりの縦割りは残っているでしょ。国がまとめて欲しいよね。そのモデルを作って自治体が手を挙げる。そんな感じに国が主導していかないとダメですよ。電気に関する法律も錯綜してますからね。自治体には限界もありますから。

―泉佐野市をモデルシティするといって欲しいですよね。

柿本:そうです!横浜市さんも視察に来られて話をするんですけど、横浜市は水素発電をされていて政令市と人口の差が歴然としてますからね(笑。
コンサルを雇って計画書を作って実行するとなると、その投資費用は莫大ですよね。専門性も入りますので泉佐野市だけではなかなか(苦笑。

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