#48  馬鹿のレッスン 華やかな舞台から生活保護、そして脱出!?

創業3年で90%の新設法人に新規の個人事業主が倒産するこの時代に、馬鹿だから挑戦できるのか?挑戦するやつを馬鹿と呼ぶのか?
自身のアパレルブランドが大成功から大転落、それでも挑戦し続けるストリートカルチャーの体現者・元プロスノーボーダーの島田聡君に私たちのヒントを求めて取材してきました。さあみんなで馬鹿になろうよ!

貧乏スノーボーダーからアパレル企業の社長に

―10数年前に初めて会ったときは、貧乏スノーボーダーだったよね?

島田君(以下島田):その頃は竿竹売りをしながらお金貯めて、バイクでゲレンデに行ってましたね。15歳からスノーボードを初めて19歳で初めてBurtonとプロ契約して、50万もらって喜んでた頃。スクローバーっていうチームを作ったのもその少し前ですね。

─スクローバーってどういうチーム?

島田:ジュニアの育成チームを作ってあげなきゃって立ち上げたチームです。次世代育成の目的で、今活躍しているライダーもほとんどスクローバー出身。

―プロスノーボーダーからアパレルブランド(会社)を立ち上げた時は、かなり肉食系で「俺はビックになるんだー」って勢いでいってたでしょ?

島田:いってたいってた(笑)。ひどいよ。イケイケドンドンだった。
当時はヒップホップが好きだったから、黒人文化の‟ビッグマネー?!”のノリ!

─その時の資金は、プロスノーボーダーで得たお金を貯めてたの?

島田:そうです。当時契約してたロシニョールで自分のブランドのウエアーを作ってて、利益率とかそういうことでちょっと揉めて独立するってなった時に、そのまま権利をよこせって言って、Sウエアーと名前を変えてブランドを立ち上げた。23歳、そっからが始まり。貯金も200万くらいしかなかった。

─その状況からどうやってスタートを切ったの?

島田:まずウエアー作んなきゃいけないから、友だちのwebできる仲間に頼んで作って貰った。で、作ったらどう売るか?ショッピングサイトのHPを作って貰おうって元スクローバーの仲間にお願いして、とりあえず立ち上げた。

─どんなアイディアで商品を売っていった?

島田:3年に1回フルモデルチェンジするっていう新しい仕組みを作った。毎年フルチェンジするとお金もデザインも大変だから、マイナーチェンジ、マイナーチェンジって。3年に1回フルモデルチェンジする車と同じ売り方で、それが当たった。
それと、ホームとアウェイってのを出した。街着っぽいデザインがホーム、どこでも対応できるような機能がついてるのがアウェイ。
あとは…資金力ないのにハッタリかましてた(笑)金ならあるよって顔して工場には後払いで作って貰って、お客さんからは予約を取って事前入金にした。スマホもSNSもない時代に、ブログとインターネットだけでよくやってたなって思うけど。

―ちなみに、当時は法人格は取ってたの?

島田:取ってないの、大馬鹿野郎だから。事業登録もせずに勝手に商売してるっていうだけ。振込みも個人のスタイラー島田聡ってとこにして貰って、どうにか1年やりくりした。

─ある意味、ファンていう信頼関係の財産があったってことだね。

島田:そうそうそう。だから売れて良かったですよ。けど問題は2年目ですよね。

2年目の大爆発

―1年目は回せてたのに、2年目に何があったの?

島田:実は1年目も回ってはなかったんです。お客さんは一応前金制ってなってたけど、でもみんなそんなにお金ないから、例えば半額入金とか分割とかそんなこともしてたの。だから現金が足りてなくて。
でもこんなに売れてんだから、金借りれんだろうって思って、池袋の保証協会ってとこ行ったら、保証協会の担当者が「じゃ会社見に行きます」てことになって。
税金払ってる?確定申告とか会社の決算書見せて?って。でもこっちは何ですかそれ?って

―確定申告もしてなかったの?

島田:それさえやってない。えらいこっちゃってなった。逆に税金納めろ、お前捕まえるよみたいな。偉いとこに電話してもーたーって(笑)。 金借りるどころか、とられる話になって、冷や汗だよね。
でもまぁ、闇金の友達が同級生にいたから、その彼にとりあえず1000万借りた。
結局その彼には全額返済したんだけど、彼から紹介してもらった税理士が…闇の税理士だった。資格持ってないっていうね。

―その人に修正申告して貰ったの?

島田:そう。で、1000万超えてるからとりあえず株式にしちゃえってなった。スタイラー社から法人化してスタイラー株式会社に変更。自分で法務局に行ったり来たりして、わけわかんない書類書いて、そこは専門家に頼まずに自分でやった。
でも、確定申告したら借りた1000万もなくなり、それでも工場に入れる金の問題は解決してないから「特殊な権力」である筋からまた金借りて。
その頃はプライベートもエアコンさえ買えない超貧乏。どん底だったですから。金使っちゃって、結婚したし、子どももできたし。これ全部2年目のことね。

―プロスノーボーダーとしての仕事もしてたわけでしょ?

島田:してた。販売用の映像の撮影もしてたから、海外行ってましたね。

イケイケ社長の大躍進

―それでもまぁ順調で、ちょっとしたやり手経営者みたいになってたよね?

島田:まぁ、色んなことに手出しちゃったのもあるよね。居酒屋やったりとか、フリースタイルスキーも作ってたりね。
3年目には直営店も作ったんですよ。マンションから店舗にしたの。
上り調子でしたね。だから、3000万、4000万・・倍になっていったんですよ。最初1000万くらいから次は3000万みたいな。

―もうおもしろくてしょうがなかったでしょ?

島田:いや、大変だったですよ。物作んなきゃいけないから、常に。
でももう3年4年5年目ぐらいまではずーっと右肩上がり。
やばくなってきたのは30歳ぐらいですかね、6年後ぐらいか。いや、その少し前から予兆はあったかな、どんぶり過ぎたからね。ばっかばっか車買ったりとかしてたしね。売れてはいたんだけど、まぁ、売れちゃー払って、売れちゃー払って。

―チャリンコ操業ってやつだ?

島田:あと、変に金に騙されて700万飛んだりとか、無駄なお金も使ってた。
金(きん)では400万円くらいやられてんのかな?そういうのもあって…。

―金って…先物取引ってこと?

島田:そうそうそうそう。営業電話かかってきて。
例えば、納期に支払う前に売上げの入金が1000万とかあるじゃないですか。それを寝かしてたらもったいないと思ったの。今のうちに運用して増やせねえかなって。1割増えるだけでもでかいじゃん。それで失敗。
それでもまぁ1000万2000万は、絶対手元に残ってた。ふざけて車買って遊んだりとか、みんなにおごりまくったりとかね。

─なんかちょっと成金になってた?

島田:だってなりたかったからね。

―そっか、HEY!yo~!のギャングスターだ(笑)確かに凄い勢いで上がっていったよね?

島田:そしたら、ある程度財布緩んでるでしょ?そんな時に右寄りの人たちに出会ったりして「お金を海外に取りに行くぞ」みたいな埋蔵金的な話が舞い込んだりするのよ。埋蔵金じゃないけど、表に出ない金みたいな。

―財団の会員にならないか、みたいな?

島田:話も結構リアルだよ。今でもあるからね、その財団。
会員ではないけど金貸しても返してくれるっていう話だから、とりあえず封筒に200万入れて渡したりとか。500万貸したりとか。靖国行っても特別な入口から入れたりね…。それで、夢を追い求めちゃったんですよね。チャンスだ!借りてる金も全部返せちゃうとか、ある内にどうにか増やしたいとかね。

―そっちに意識がいっちゃうと、今までのユーザー目線だったところも弱くならない?

島田:なるなる。でも、今思えば見抜ける訳ないですよ。23で会社作って社会にでたこともないですからね。

急下降と天変地異

─そんな下がり気味の時に、東日本大震災が起きた。

島田:ウエアーにしても去年の支払いをしないと今年の分は納品して貰えなくなるじゃないですか?それもあってデカい金が欲しくて…ますますその財団にハマった。
そっからは、出会うやつ出会うやつ皆胡散臭い。

─伊豆で釣具屋もはじめたよね?

島田:俺、釣好きだしチャンスかなと思って(笑)でも、その関係で出会った人にまた騙された。そんな話ばかり3年ぐらいずーっと続いて、借りた金がどんどんデカくなって…最初100万が100万返す為に200万てね。だからね、真面目にやった方がいいんですよ、地に足付けて。 でも冷静に考えたら経験ですね、それもこれも。そんなこと40代50代でくらってたら嫌だけど。

―釣具屋も結局は散々たるものだった?

島田:契約しちゃった時点でカミさんの名義になってたんですよ、保証人。もうダメだって途方に暮れた。食えねえし、事務所もたたまなきゃならねえし、やべえなーつって。どうしようかなーつって。

―この段階では、もうウエアーは作ってなかったの?

払う金がなくて、ウエアーはもう作れなかったから。いや、でも最後に作った。だから、その会社には未だに払えてない。

どん底生活

─そこからの生活はどんなだった?

島田:そっからの3年は取り立てが凄かった。うるさい。家にもピンポン来るし。

─普通その段階でノイローゼになるんじゃないの?

島田:でしょうね。でも生活費の為になんとかバイク便やって。子どもも2人目が生まれるころで、それでも全然たりないけど。てか、強いのはカミさんですよ。子ども育てながら「一緒に頑張ろう」って。初めのカミさんはすぐ逃げちゃったのに、今のカミさんは初めのカミさんとの子どもまで面倒みながら「私はそういう星だ」「頑張んなよ!私は何やっても味方だから」って。

─こういう時こそ家族のチームワークを発揮しないとって?

島田:でもバイク便じゃ全然稼げない。おかんとかカミさんの実家とかからも金借りたけど、それでも足りなくて、このサイクルから抜け出す術もない。だから、生活保護を受けようってことになった。

─一回破産しちゃおうと?

島田:いや、弁護士について貰ったら、破産する前にこれだったらまず生活保護通るよって話になった。破産手続き中で仕事もない、子どもがいる、どうしょうもないって。
バイク便はやってたらダメだから辞めた。いっぱい持ってたカードも、例えば電車のカード買ったりチケット買ったりして現金化して全部借金取りに取られていった。1カ月くらいで全部のカードを使い切って、おむつ買う金もなかった。

─生活保護の審査が通るまではどのくらいかかるの?

島田:申請してすぐでしたよ、遅かったら死んじゃうかもしれないもんね。早急に必要だって言ったらすぐにお金くれた。 あと、バイク便も最後に事故って辞めるしかなくなった。

─弱り目に祟り目だね…。破産手続きの後は、取り立ての連絡は一切なくなるの?

島田:なくなった。でも取引先はエライ痛いよね。最後に悪あがきしてウエアーを作った取引先の会社だけ返せてないから、それは何年先でもちゃんと返したい。

─華やかな場所から生活保護って、精神的な葛藤っていうのはなかったの?

島田:ある意味スッキリしましたよ。

「今」と「これから」のこと

─生活保護から抜け出せたのはいつ?

島田:3人目の出産のタイミング。2人目と同じ病院が良かったんだけど、生活保護中は指定された病院じゃないとダメ。だからそのタイミングで知人のジムで働くことにして「ここで就職できそうです」って。そしたら「頑張って下さいねー」って

─会社はまた作りたい?今はフリーランスのトレーナーでしょ?そしたら、そっちの発展形?

島田:絶対やりたいですね、何かはね。
でも今は絶賛復活中。Sウエアーの時にお金払えてない会社も一社あるから、だから確実にまたやる。その人だけは裁判見に来てて、「いつか返します。申し訳ないです」って謝ったら「信用してるよ」って言ってくれたから。
2000万返さなきゃだから、まだ生活にゆとりなくて全然出来てないけど。

─そういえば、プロスノーボーダーとしても復活してなかった?

島田:一回やったね、ボーダークロスで。オリンピック出ようと思ったんですよ、いけるかなって思って。でもケガしてそっから出来なくなった。(笑)
そっち側の道はさすがにもう無理だよ。子どもも今は5人に増えちゃったし。5人全員男ですよ、凄いでしょ?

とことん前向きの秘訣

─ホント波乱万丈だけど、俺ダメだなーって悩んだ事とかはない?

島田:ない(笑)!悩んでる暇はない!
まぁ言っても会社潰したり、生活保護貰ったり、ふつうどっかで立ち止まりそうだけど…馬鹿は強いですよ。経験することは好きだし。全部なるようになっちゃってたし…気づいてたから。気づきになってたから。全部精算っていうか、こういうためだったんだー。勉強さしてもらったわー。ありがとうー!ぐらいの感じ

─前向きだ。常に前向きなんだ。

島田:そうそうそう。今なんて、まさにそれだけ。会社作って、潰して、生活立て直して、子どもがまた増えて、また改めて会社作ったときに、同じこと絶対しない!って。
俺、本一冊も読まないし、漫画も読んだことないから、全部実践。馬鹿なの。生きることで勉強してる。だからたぶん、間違ってないですよ。考えてる時間はいつも長いけどね。

─考えに答えが出ない時はどうしてる?ヒントを求めて誰かに会いに行くの?

島田:基本的にずーっとしゃべり続けるタイプだから、アウトプットする。気づいたら人に話す。それがカミさんだったり仲間だったり。そしてやっぱり人と会う。あと悔しい想いをするのもいいと思う。そこに気づきがあるから。

─島田君は行動力もそうだし、とにかく自分に絶対負けないよね。
もし仮にそういう風に生きたいと思ったら、どこから始めたらいいの?

島田:気づきを覚えたらいいですよね。
過去に気付けば、今に答えが出る。そしたら、今が必然になる。で、その今が明日になる訳じゃないですか。
だから、過去に気づきがあれば、今が肯定できて、明日の行動がポジティブに変わって来るんです。そうすると、出会う人も変わって来るし。

─気づきがあれば、人生に後悔や文句なんてない?

島田:物は考えようっていうか…人間って結構都合いいことしかキャッチしいないけど、都合悪かったほうがチャンスやメッセージがいっぱいあるわけですよ。家庭環境悪い子なんて、相当簡単に色んな事に気づけるじゃないですか。いいように。

─例えばどんな風に?

島田:家庭環境悪くってブータラ文句言ってるよりも、繰り返さないようにしなきゃいけないんだから、同じことをしないよう!とか。 そのために見せられてたんだって気づけばいい。

─なるほどね。

島田:あとは、例えば車の事故でもよく「よかったね。それで済んで」とかって言うじゃないですか。でも、なんで事故ったかって気づかなきゃいけない。何の意味があるのか。例えば、もっと慎重になりなさいとかってことなのか、とか。

─それこそポジティブな意味を、一回見出してみなってことだね。

島田:自分の成長の為に必要な出来事としてみてみなよって。そしたら、ホントに全部ポジティブだから。俺の座右の銘は、「好きは不可能を超える」!

─島田君、有難うございました。

―――馬鹿になれ、とことん馬鹿になれ。恥をかけ、とことん恥をかけ。かいてかいて恥かいて、裸になったら見えてくる、本当の自分が見えてくる。本当の自分も笑ってた、それくらい 馬鹿になれ(アントニオ猪木)
馬鹿になれるからこそ、自分に真っ直ぐ、明日を恐れずに生きられる。言葉を変えれば、それが究極のポジティブなのかもしれませんね。

INDEXヘ戻る

Follow us!