#30  自治体が電力会社になる?!みやまスマートエネルギーの挑戦

飛行機で博多に着いたボクたちは、空港から車に飛び乗り福岡県みやま市に向かっていた。今回の取材は自治体が初めて家庭などの電気の売買を目的として設立した電気事業会社みやまスマートエネルギー株式会社である。その新しい取り組みが電力とIT、2つの公共インフラを統合的にデザインすることで、地域課題に解消する動きに2015年のグットデザイン賞を受賞。福岡県みやま市の実験と挑戦の話を代表取締役社長の磯部 達さんに伺った。

―磯部さんが始めるきっかけは何だったのですか?

磯部:街全体で『Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)』がありますが、その構想の手前で物もマネージメントもサービスの提供も丸ごとやることを前職で私は考えていたんですよ。家も建てるし、インフラも全てやる。それがきっかけでいろいろな行政の方や市長さんと出会い、その中でみやま市長とも知り合いました。

ー最初はどんなことから始めたのでしょうか?

磯部:みやま市が持っているメガソーラーが9400平米あって割と大きな土地なんですが、そこを我々は電源として買っています。これは市の土地で工場に企業誘致しようとしたけども、なかなか工場が来てくれない。そこで福島の震災もあってエネルギーを自給自足して、ゆくゆくはエネルギーを地域のために使うことを視野に入れて、みやま市が筆頭株主で市民や市内の企業に呼びかけました。


みやまスマートエネルギー株式会社 代表取締役社長 磯部 達さん

―いろんな人や企業が共同で作られたわけですね。

磯部:2年前に HEMS のホームエネルギーマネージメントシステム家庭内普及のため経済産業省の実証事業があり、みやま市が自治体としては唯一採択されたわけです。今年の3月で実証事業が終わったのですが、何をしたかというと、それまでの企業向けの省エネは機器を導入するため、例えばLEDを導入するための補助金を付けたり過去10数年に様々な施策があったのですが、大口の家庭向けの省エネ活動は個人の強い意識がないと難しいですから。

―積極的なのはストイックでマニアックな人たちの印象です。

磯部:それでは国全体の省エネは進まない、家庭内での省エネルギーを進めるために、一つは「見える化」ですけど。自分の電気の使い方を知って意識して行動していきましょうと。ただ、それだけでも長続きしなくて三日坊主で終わってしまう。そのためには家の中のHEMSという電力データを利用して、新しいサービスがあったり経済的メリットがあったり長続きするサービスをみんなで考えないと省エネルギー行動が長続きしないと経済産業省は考えたんですよね。

―それは大きなプロジェクトですね。

磯部:家庭向けサービスを電力データを活用して、あるいはその延長線上で電力データを使用しないでも出来るサービスを考える必要があるということで、この大きなプロジェクト作られました。そして、みやま市が初めて自治体として参加、みやま市の1万4千世帯のうち2千世帯が参加してもらい2年間一緒に考えましょうと。そんな下地がありました。

―HEMSのコンテンツはどんなものがあるのでしょうか。

磯部:高齢者の見守りサービスや健康チェックとかですね。家庭の余った太陽光を買うのは、その時に出来たコンテンツですね。

HEMSシステムの普及実験がきっかけ

―実際売り出してからの反応は如何でしょうか。

磯部:反応は良いですよ、みなさん協力的です。手続きが面倒だといわれます(笑。

―今は何世帯が契約されてるのでしょうか?

磯部:1千件ちょっと、地域の会社やお店ですかね。今年目標は3000世帯なんですけども、3年後には1万世帯にしようと市長からは言われているので、それに向けて加速しないとダメだなって思っています。

―スタッフは何名ぐらいですか?

磯部:20名強です、それに市役所の方も手伝ってくれています。

―電気メニューの他にもコンテンツがいろいろありますが、見守りサービスなどコンテンツはみなさんで考えてるのでしょうか。

磯部:そうです。スタッフで考えています。

ーコンテンツで人気あるのはどれですか?

磯部:買い物サポートですかね。

―自分の住んでる街を応援したい、そして税金が下がると嬉しいです。将来的にみやま市の税金セット割とかあるのでしょうか?

磯部:税金のセット割は考えれるかなと、そんな話が出ていますから、今後はあるかもわかりませんね。

税金のセット割も検討課題に

―電力は再生可能エネルギーが中心ですが契約が増えた場合の電源は?

磯部:基本的に再生可能エネルギーの比率にこだわっていきたいので、自治体間連携で安い電力の調達にも力を入れます。それは様々な電力がmixされますが、いろんなところから融通しながら仕入れる交渉は出来てます。

―ただ再生可能エネルギーの比率が下がると。今はどれぐらいですか?

磯部:今は4割ぐらいです。そこはバランスを見ながらですね。水力や他の再エネも東京都との連携も始まります。福島の電力を東京の公共施設に提供するのが始まっていまして、我々が九州からオペレーションをやっています。すると、その電力が余るので余った電力は、みやま電力に持ってきています。

―東京都とのプロジェクトではコンサルティングされてるのですか。

磯部:コンサルではなくて需給のコントロールしています。オペレーションをやっています。

―すごいですね。需給管理のシステムも構築されてるわけですね。

磯部:はい、自分たちでやっています。100%どこにも頼ってないです。そこが他と違うかもしれないですね。全ての業務を地域を超えて自分達でやっています。需給管理、スイッチング、コールセンター、営業、ここのようなショールームの建設。広報活動まで全て自分達でやっています。

自力100%で頼らず需給コントロール

―流石ですね。みやま電力の将来的なプランは?

磯部:最初は九州からですが、基本的には自治体連携。同じような目的を持っている自治体が全国各地にいますから。九州から全国に対応します。

―みやまスタイルをやりたいところがあればサポートすると。私の地元でもみやまスタイルでやりたい市民団体が出てくるかもですね。

磯部:そんなところはありますよ。個人というよりも、それを通じて市役所に話を持って行ってサポートする事例はあります。

みやまスタイルが全国に広がる

―東京エリアもあるのですか?

磯部:東京都内は複数あります。先日も講演をお願いされたので行きました。そんなところからお手伝い出来ればと思っています。

―いいですね。地方から変わっていく気配を感じます。

磯部:お手伝いは何を望まれるかにもよりますが、行政との連携が基本です。やはり民間同士では難しいことがあります。例えば水力発電をお互いに調達する。立ち上げのお手伝いはしますけど、それからは地域のためにならないので、1年か2年で安定してきたら現地で出来るように教育します。


エネルギーの地産地消都市としてみやま市は、自治体、地域金融機関、民間ノウハウを利用した地方創生のモデルケースとして分散型、自立エネルギーシステムの構築を目指して進んでいく。今後の動きも注目したい。

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